【相続】遺言能力

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遺言能力

遺言が有効に成立するためには、意思能力を有しなければなりません。
方式違背の遺言、錯誤による遺言などと同じく、意思能力を欠く者の遺言は無効とされます。
一般の取引において法律行為をするときに意思能力を備えていなければならないのと同じです。
この意思能力は、自分の行為の意味と結果を理解することができるだけの意志の力を指し、一般には、7歳ころから次第に備わり始めるといわれていますが、法律行為の種類、内容に応じて要求される程度も異なるものと考えられます。

法律行為の都度その人に意思能力があるかどうかを確認することは現実的ではありませんので、法律は、ある程度客観的な基準を設け、家庭裁判所の審査判断によりその基準に達しない人を制限行為能力者と定め、その人の法律行為については事後に取り消すことを認めています。
制限行為能力者には、成年被後見人、被保佐人、被補助人と後に述べる未成年者があります。

遺言については、これらの制限行為能力に関する規定は適用されません。
遺言に相応しい意思能力を備えている人であれば、何の制約もなく遺言をすることができることになります。
ただし、成年被後見人については、事理を弁識する能力を欠いた状況にありますので、遺言をすることができるのは、事理を弁識する能力を一時的に回復したときに限り、
また、能力の存否について争いを生じないように、遺言の席に医師2人以上が立会い、かつ、遺言者が遺言をするときにおいて精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、押印しなければならないことになっています。

遺言を他の取引行為等と区別する理由としては、遺言は人の最終意思として尊重すべきものであること、本人の財産の安全を考慮すべき程度が取引行為等に比べて低いこと、遺言は一定の限られた事項について、かつ、厳格な方式を踏まなければ有効に成立しないので、意思能力を欠く人が遺言をすることはないと期待できること等があると言われています。

遺言は、満15歳に達していれば、親権者の同意なしに、単独ですることができます。
逆に15歳に達しない者のした遺言は無効です。
この年齢制限は、旧民法が婚姻年齢(男17歳、女15歳)に合わせて遺言年齢も定めていたものがそのままとされたものだと言われています。

文:司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所
Vol.108 2016.6.30メールマガジンより転載

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