本日は、相続税関連のお話です。
「遺言執行費用」とは、遺言執行者を依頼した場合の報酬だったり、相続財産の管理費用だったり、所有権移転登記の手数料・税金などのことです。遺言執行者の役割は、原則として、遺言の内容を遺言通りに手続することです。遺言執行者は必ず定めたり依頼しないといけないわけではありません。
民法1006条(後掲)にも「遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。」と”できる規定”としています。
遺言で遺言執行者の定めがなくても民法1010条に、「遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。」とあります。そして、民法1009条には「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。 」とありますが、逆に言えば、未成年者及び破産者以外なら誰でもなれます。
外部の人(例えば、弁護士、司法書士、行政書士、信託銀行など)に遺言執行者となることを依頼するためにはお金(報酬)がかかりますよね。民法1012条には「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。」とあります。
私は法律の専門家ではないため民法の基本的な話はこの程度にして、本題に入ります。
ここからは民法の話でなく、相続税法の話です。(少し話がそれますが、相続税の話題の際は、どうしても民法の話(事項)と相続税の話(事項)がでてきます。実務上は、民法の話と相続税の話は区別することが大切です。話を戻します。)
遺言執行者に対する報酬などは”相続税の債務控除”の対象となるでしょうか。債務控除については、相続税法13条、14条に定められています。概要は No.4126 相続財産から控除できる債務 をご参照ください。
債務控除の適用を受けられる要件をかいつまんで書くと・・・
① 相続又は遺贈により財産を取得した者であること。
② 債務を負担していること。
です。
債務の要件は「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。) 」とあります。では、遺言執行者へ支払う遺言執行報酬はこの「相続税の債務控除」の要件を満たすでしょうか?
裁決事例があります。なお、この裁決の対象となった事案では、
・ 被相続人は生前に、2名の遺言執行者と遺言執行の委任契約を交わしていた。
・ 被相続人は公正証書遺言により2名の遺言執行者が指定していた。
・ 委任契約に基づき、相続人は「遺言者執行報酬」を2名の遺言執行者に10,000,000円ずつ、合計20,000,000円が支払った。
というものです。
納税者は「遺言執行費用は相続人の債務ではなく、被相続人の債務であるから債務控除を認めるべき」などと主張しましたが、結論としては、「相続税の債務控除」の対象とは認められませんでした。
国税不服審判所の判断はざっくり言うと、
「遺言執行人と被相続人が遺言執行の契約をしていても、遺言自体の効力は民法985条1項により死亡の時に初めて効力を生じるのであるし、死亡後の遺言執行に関する遺言執行人との委任は相続人との間に生じるものだから、遺言執行費用は相続人が負担すべき費用である。」などの理由によるものです。(他にも多少の論点はありますが)
つまり「被相続人の債務」にすら該当しない、と判断されたのです。(「被相続人の債務」にすら該当しない時点で債務控除の対象となる債務にはなりません。)
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