弁護士 大村 健
最近、公益財団法人についてよく耳にします。とある上場企業のオーナー社長が著名な画家の絵を数十億円で落札し、それを同人が会長を務める公益財団法人の展覧会に展示する予定だというニュースは記憶に新しいところでしょう。
また、著名上場企業の上位株主を見てみると公益財団法人が入っていることが多いことに気づきます。欧米では広く浸透し、相続対策として利用されたりしているようです。
私も本年(平成28年)2月に一般財団法人国際スポーツ文化財団の評議員を拝命しましたことをきっかけとして、公益財団法人について、よく接する機会が増えるようになりました。
今回は、新法・新判例とは趣きが異なりますが、公益財団法人について触れてみたいと思います。
なお、私が就任した、上記の財団法人は10月6日付けで無事に内閣総理大臣から公益認定を受け、公益財団法人国際スポーツ文化財団となりました。
公益財団法人とは、平成20年12月1日施行の「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下「認定法」といいます。)に基づいて設立される法人です。この法律によって、従来の法人制度ががらりと変わって、まずは公益目的事業を行う一般財団法人を設立してから、公益認定を受けた場合に公益財団法人に移行するという手続きになりました。
公益目的事業として認められるのは、認定法第4条で「学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう」とされていて、別表として以下の23の事業が掲げられています。
一般財団法人のうち、民間有識者からなる第三者委員会(国(内閣府):公益認定等委員会(7人の委員)。都道府県:合議制の機関(○○県公益認定等委員会/審議会)による公益性の審査(公益目的事業を行うことを主たる目的とすること等)を経て、行政庁(内閣府又は都道府県)から公益認定を受けることで、公益財団法人となります。
公益認定を受けるためには非常に厳しい認定基準を満たす必要があり、年間、数えるほどしか公益認定を受けられていないのが現状です。
認定基準は、以下のとおりです(認定法第5条)。
大きく、①公益に資する活動をしているかという「公益性」の基準(1、3~9、13、14)と②公益目的事業を行う能力・体制があるかという「ガバナンス」の基準(2、10~12、15~17)とに分けられます。
公益財団法人のメリットとして、以下のような優遇税制が挙げられます。
1.相続税が非課税
相続した財産を公益財団法人に寄付した場合、相続税が非課税になります。安定した配当実績が必要となりますが、議決権付株式の場合、発行済株式の50%まで寄付することができます。なお、公益財団法人は議決権を行使することが可能です。
2.法人税が非課税
公益目的事業の法人税が非課税になります。
3.利子・配当等に係る源泉所得税の非課税
公益財団法人が利子、配当、給付補てん金、利息、利益、差益及び利益の分配を受ける場合には、所得税は非課税です。
4.寄付者の税額控除
公益財団法人に寄付を行った場合、寄付を行った人は寄付額に応じて控除を受けることができます。この制度によって公益財団法人は寄付を集めやすいという特徴があります。
公益財団法人には、このようなメリットがあるため、公益財団法人は、究極的な相続対策・事業承継として、今後も利用の増大が見込まれています。
以 上
文:弁護士 大村 健
出典:フォーサイト総合法律事務所HP 「マンスリーコラム新法・新判例」
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フォーサイト総合法律事務所 代表パートナー 弁護士
1974年埼玉県生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中の96年、司法試験合格。99年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。11年、フォーサイト総合法律事務所開設、代表パートナー弁護士に就任(現任)。
同事務所は、生え抜きの弁護士9名(本年12月に新規登録弁護士1名が加入予定)・司法書士兼行政書士1名が所属し、企業法務全般、M&A・MBO/企業再編、会社法、金融商品取引法、ベンチャー・株式公開(IPO)、ファイナンス(種類株式・新株予約権発行含む)、IT・エンターテインメント・バイオ/知的財産権、労働法、コンプライアンス、不動産関連、エネルギー関連、事業再生、訴訟・争訟等を取り扱う。
『新株予約権・種類株式の実務』、『図解入門ビジネス最新会社法の基本と仕組みがよ~くわかる本』、『ケースでわかる株式評価の実務』ほか著書・論文多数。
フォーサイト総合法律事務所 http://www.foresight-law.gr.jp