ハードルが高い「HVサプライヤーへの道」

HVにまだ商機があると判断したトヨタは、他社生産車向けに車両電動化システムを販売することで売上増を図る。つまり、トヨタがHVシステムのサプライヤー(部品供給業者)になるということだ。特許を開放すれば、どのメーカーでもHVを量産できるというわけではない。安全かつ燃費の良い制御プログラムや部品間のすり合わせ、生産技術など、実際に量産しているトヨタの支援なしには満足なHV生産はできないだろう。

HV用パワーコントロールユニットのような基幹部品になると、特許情報だけでは量産できない(同社ホームページより)

HVのサプライヤーとなることで、トヨタは自社HVに搭載する部品も量産効果によりコストダウンできる。まさにハイブリッドシステムを「売ってよし」「買ってよし」、結果として「トヨタよし」の「三方よし」を狙っているわけだ。

最大の懸念材料はEV普及のスピードだ。トヨタの読み通り、EV普及がコスト面や機能面で進まなければHVの需要も今後10年以上は見込めるだろう。しかし、何らかのブレークスルーで車載電池のコスト削減が進んだり、航続距離が伸びたり、充電時間が短縮したりすれば、HVの賞味期限は数年で切れることになる。

現実にそうなるかどうかは別として、他の自動車メーカーが「EVの普及は近い」と確信すれば、トヨタの特許開放とHVサプライヤー構想は「絵に描いた餅」に終わる。さらに日産がトヨタに対抗してEVとの親和性が高いシリーズ方式のHVシステムの外販を始めれば、トヨタのHV「プリウス」や「アクア」が「ノート e-POWER」に販売台数で追い抜かれたように、サプライヤー競争に敗れる可能性が高い。

1997年に世界で初めてHVを量産し、2018年のHV販売台数は163万台と世界シェアの約半数を占める「HV帝国」を築き上げたトヨタだが、新たに「HVサプライヤーの王者」として君臨するには数々のハードルを越えなくてはならないようだ。

文:M&A online編集部