TOB(株式公開買い付け)合戦の舞台となっている中堅印刷会社、廣済堂<7868>の株価が22日急騰し、前日比122円(16.55%)高の859円で取引を終えた。東証1部の値上がり率トップで、東証全体でも9位。1月半ばの最初のTOB開始時の株価と比べると7割高だ。
この日は、すでに1株700円でTOBが進行中だった廣済堂に対し、南青山不動産(東京都渋谷区)が1株750円での対抗TOBを開始した初日。南青山不動産は旧村上ファンドの関係企業であるレノ(東京都渋谷区)のパートナー企業。レノグループがTOBに参戦したことで、買付価格吊り上げへの思惑が買い材料になった格好だ。
廣済堂は米投資ファンドのベインキャピタルを組んで、MBO(経営陣が参加する買収)の一環としてのTOBを1月半ばに開始したが、2月初めにレノによる株買い占めが判明して以降、市場価格が買付価格を上回る状況が続き、TOBの成立は絶望的になっている。しかもTOB期間は3月25日まで残すところ1営業日だけ。
廣済堂は3月8日に買付価格を1株610円から700円に引き上げる一方、買付予定数の下限を保有割合で当初の66.67%から50%に引き下げ、TOB成立のためのハードルを低くした。買付期間はこれまで2度延長して45営業日としたが、規定ではあと15営業日延長(最大60営業日)できる。
廣済堂へのTOBはベインキャピタルの傘下企業が実施中。MBOの一環で、最終的に株式の非公開化を目的とする。これに対し、対抗TOBを仕掛けたレノグループの買付予定数は保有割合が50%となる910万株強を下限とし、廣済堂の上場維持を前提とする。買付期間は3月22日~4月18日。
廣済堂側がTOBに望みをつなぐためには、市場価格に近い線まで買付価格を引き上げ、買付期間を延長することが必要となる。その場合、週明け25日ぎりぎりのタイミングでTOB条件変更を発表しなければならない。廣済堂が果たして打ち手を繰り出すのかどうか。現下の株式市場はその一点に注目している。
文:M&A Online編集部
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