ソフトバンクグループ<9984>の株価が思わぬ急落に見舞われています。9月28日に年初来高値の11,500円をつけた後、株価は10月15日の9,164円まで20.32%下落。回復する兆しは今のところみせていません。理由は、サウジアラビアの反体制派記者ジャマル・カショギ氏が、トルコのサウジ領事館で行方不明になっている問題が長期化しているため。ウォールストリートジャーナルによると、サウジ政府は「ならず者の工作員らが尋問中に誤って殺害した」と発表することを検討するとしています。

サウジアラビアは、孫正義氏が推進する10兆円規模のソフトバンクビジョンファンドにおよそ5兆円を出資。更に追加で、第2のビジョンファンドにも5兆円を出資する意向を示しています。仮にサウジアラビアが記者の殺害に関与していたとすれば、同国からの投資を受け入れない企業や投資家が出るとの懸念が広がっています。そうなれば、孫正義氏の肝いりで始まったソフトバンクビジョンファンドが、求心力を失うことは必至です。

この記事では、以下3つの情報が得られます。

  • ①サウジアラビアがソフトバンクのファンドに出資を決めた理由
  • ②ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する改革の内容
  • ③ソフトバンクビジョンファンドの仕組み
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史上最大規模のプライベートエクイティファンドに資金を投じる理由

サウジアラビアが、ソフトバンクビジョンファンドに出資を決めた理由は極めて単純です。石油依存からの脱却に本腰を入れるためです。その中核を担うのが、サウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」。同ファンドは海外からの技術を取り入れるため、海外投資比率を大幅に引き上げる計画を打ち出しました。それが2016年4月に発表された経済改革プラン「ビジョン2030」です。

ソフトバンクとPIFがソフトバンクビジョンファンドの覚書を締結したのが、2016年10月。孫正義氏はサウジアラビアの動きと歩調を合わせてファンドを立ち上げたのでした。

サウジアラビアは国民の60%近くが公務員です。産油国であるため、国民が働かなくても経済が安定していることが背景にあります。サウジアラビアの閣僚が「公務員は1日1時間しか働かない」と述べるほど、労働に対する意欲が低い国の一つ。

そのようなことから、王室の汚職が蔓延し、改革は進みませんでした。無理をして改革を起こす必要も、その熱意が湧かなかったとも言い換えられます。

しかし、原油安が進んでそうもいかなくなりました。現在、サウジアラビアの脱石油依存を進めている人物こそ、ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子です。彼は「ビジョン2030」の中で、非原油収入を2016年の3倍以上、民間部門の新規雇用45万人を創出するなどの目標を掲げました。

副皇太子は伸び盛りの新興企業に出資をし、技術移転を促して雇用を創出。ハイテクノロジー産業の成長を促して、石油に依存しない国づくりを目指しましょうとしたのです。それにはソフトバンクが掲げる新興企業向けのファンドがうってつけでした。

アメリカとサウジアラビアの関係悪化の架け橋としての役割も

孫正義氏は大統領になったばかりのトランプ氏との会談を実現。およそ5兆7000億円を米国に投資し、5万人の雇用を生み出すと約束しました。その狙いは何だったのか。

オバマ政権のアメリカは、サウジアラビアの宿敵であるイランとの関係改善を模索していました。サウジアラビアは苦々しい思いでそれを眺めていたのです。

2017年にトランプ氏が大統領に就任した直後、孫正義氏は安倍首相よりも早くトランプ氏のもとを訪れています。サウジアラビアが大口の出資者となっているソフトバンクビジョンファンドが、米国に雇用をもたらすことをアピールしたのです。これは明らかに、アメリカとサウジアラビアの関係改善を狙ったものでした。

しかしここにきて、サウジアラビアに国際的な非難が集まる思わぬ事態が巻き起こったのです。10月23日から、首都リアドにて「未来投資イニシアチブ」が開かれます。しかし、今回の一件を理由に米メディア企業バイアコムや、配車アプリのウーバー・テクノロジーズの経営者が参加を拒否する事態へと発展しています。ソフトバンクビジョンファンドが、この先どのような打撃を受けるのかは今のところ未知数です。