アルミ圧延首位のUACJ<5741>が2月末に内定した首脳人事の差し戻しを含めて再検討していることが明らかになった。会長が留任、社長が副会長に就き、両者が引き続き代表取締役にとどまる人事案に対して、終始「ノー」を主張してきたのが筆頭株主の古河電気工業<5801>。3月末に定時株主総会を開いた日本ペイントホールディングス<4621>では、筆頭株主でシンガポールの塗料大手、ウットラムグループが推す取締役6人を受け入れ、取締役10人の過半数を占めることになった。表向き、大株主の意向には逆らえなかった形だ。敵か、味方か、企業経営にとって「大株主」とはー。

大株主に明確は基準はなく、いわゆる大口の株主

日本企業の多くが3月期決算会社であることから、例年、株主総会は6月後半に集中する。株主であれば、株主総会での議決権を行使できるし、配当や株主優待を受け取る権利がある。また、会社が解散する際は残余財産の分配を受け取ることができる。これらが株主の基本的な権利だ。

それでは、大株主とは? 実は明確な基準はない。企業の株式の多数を保有する株主のことで、何パーセント以上なら大株主という規定があるわけではない。大口の株主を指す。金融商品取引法では100分の10以上(10%)の株式を保有する株主を「主要株主」と呼んでおり、上場企業の場合、主要株主に変更があった場合、速やかな適時開示(重要な会社情報の開示)が義務づけられている。

UACJが2月27日に発表した首脳人事案に反対を表明した古河電工はUACJの株式24.9%を保有する筆頭株主。その人事案は新社長に石原美幸取締役が昇格し、岡田満社長が代表権のある副会長に就き、山内重徳代表取締役会長は留任するという内容(いずれも就任日は6月21日)。古河電工は即日、「一部人事について賛成しかねる点がある」として、会長、副会長人事の再考を申し入れていることを明らかにした。

UACJは2013年、古河電工の子会社だった古河スカイと、住友金属工業(現新日鉄住金)系の住友軽金属工業が合併して誕生。合併会社につきものの主導権争いの側面も見え隠れするが、大株主が異を唱えたのだ。古河電工に続く大株主は新日鉄住金で、7.7%を保有する。

ここへきて、大株主として急浮上してきたのが、シンガポールを拠点とするエフィッシモ・キャピタル・マネージメント。旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンドで、6.79%を保有することが3月末、大量保有報告書で判明した。4月5日には9.8%までエフィッシモの保有比率が高まっていることが変更報告書で明らかになった。“モノ言う株主”の登場は新たな波乱要因になる可能性もある。

ちなみに、上場企業の株式の5%を超えて株式を保有した場合、当該保有者は5営業日以内に大量保有報告書を提出しなければならない(5%ルール)。また、その後、1%以上の増減があった場合、当該保有者は変更報告書の提出が義務づけられている。

持ち株比率株主の権利
75%以上 特殊決議(株式の譲渡制限を付与する定款変更など)を単独で成立できる
2/3以上 特別決議(定款変更、取締役・監査役の解任、会社の解散・合併、資本減少、
営業譲渡など)を単独で成立できる
50%超 普通決議(取締役解任、剰余金配当など)単独で成立できる
50%以上 普通決議を単独で阻止できる
1/3以上 特別決議を単独で阻止できる
3%以上 株主総会招集、役員解任、会計帳簿閲覧などの請求権
1%以上 株主提案(株主総会における議案提案権)

1%保有する株主には「株主提案権」

株式の保有割合に応じて株主が得られる権利にも違いがある。1 %以上を保有していれば、株主提案権が生まれる。3%以上保有すると、株主総会招集や役員解任などの請求権が得られる。50%超となると、株主総会の普通決議(取締役解任や剰余金配当など)を単独で成立可能になる。すなわち、経営権を得られる。M&Aで50%超を目指すのもこのためだ。

日本ペイントHDのケースでは、ウットラムグループの株主提案は6人の取締役候補を推薦する内容だった。同社の取締役は定款上、10人までと定めていることから、要求を受け入れると、ウットラム側が取締役会を制する形となる。株主提案の目的は「株主価値の最大化」。

日本ペイントHDは当初、反発と同時に戸惑いが広がった。というのも、両社は50年を超える合弁パートナーとして緊密な関係を築いていたからだ。2014年にはウットラムが日本ペイントHDの持ち株比率を従来の14.51%から38.99%に引き上げ、ウットラム代表のゴー・ハップジン氏が日本ペイントHD取締役に加わっていた。3月末の株主総会を経た新体制ではゴー・ハップジン氏が取締役会長に就任した。

電子部品メーカーのアルプス電気<6770>は2019年1月、子会社でカーオーディオなど車載用情報機器を手がけるアルパイン<6816>と経営統合を予定しているが、ここでも大株主が波乱要因の一つになっている。アルパイン株式を9%強保有する香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメント・カンパニーが統合に異議を唱えているのだ。

大株主との間で膠着状態が続けば、賛成、反対の2派分かれて多数派工作を繰り広げる委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展する可能性が高まる。こうした委任状争奪は、2002年、東京スタイル(現TSIホールディングス<3608>傘下)を舞台に、会社側と村上ファンドが対立したことで日本でも知られるようになった。最近では2015年、大塚家具<8186>で経営方針をめぐって親子が対立し、委任状争奪騒動戦が世間の好餌となったのが記憶に新しい。

文:M&A Online編集部