5.ランバクシーを超えて

 今、ランバクシーの買収から始まったM&Aにおける苦難の道のりは、(サン・ファーマに対する表明保証を除いて)終着を迎えつつある。第一三共がランバクシーのM&Aから金銭的損失を被ったが、この売却を経て屋台骨を揺るがすほどではなくなっている。こうなると、第一三共の最も大きな損失は、時間を無駄にしたことだ。

 図5をご覧頂きたい。ライバルの武田薬品工業は、06年3月期に3400億円程度であった海外売り上げは、16年3月期には1兆1100億円になり、大幅に伸ばしている。ミレニアム社やナイコメッド社の買収が大きく貢献している。海外売上高比率も06年3月期は28%であったが、16年3月期には62%となっている。一方の第一三共は、06年3月期の海外売り上げは3072億円と武田薬品工業と遜色なかったが、16年3月期に4300億円と武田薬品工業と比較して伸び悩んでいる。海外売上高比率も06年3月期で33.2%に対して16年3月期で43.7%と上昇しているものの、武田薬品工業程ではない。国内製薬会社において最も重要とされる海外戦略について、差を付けられた形だ。08年に、ランバクシー買収時に掲げた後発医薬品と新興国という複眼経営は、振り出しに戻ってしまった。16年現在も、それに代わる目玉がない。ライバル企業が海外展開を加速させるなか、短期的にライバル企業に対抗する経営戦略を構築しなければならない。

 時間を買うにはM&Aしかない。新薬を開発し、新しいマーケットに打って出るのは中長期的な経営視点では重要であるが、ライバルとマーケットは待ってくれない。ランバクシーの失敗でM&Aをためらうといった愚策を取るのではなく、ランバクシーのM&Aで得た知識とノウハウを次のM&Aに生かしてもらいたい。

 この点、第一三共は16年3月に20年度までの中期経営計画を発表。M&Aや新規事業の開発に5000億円を投資するとした。サン・ファーマ株式の売却により、手元資金は約7000億円となっており、これを活用する。ようやく攻めの経営に転じることができる。

有価証券報告書決算短信を元に制作)

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部