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ソフトバンク、米携帯子会社スプリント売却遅れの「皮肉な理由」

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とっくに決着がついたはずのソフトバンクグループ<9984>子会社米携帯大手スプリントの米TモバイルUSへの売却に暗雲が立ちこめている。米司法省と米連邦通信委員会(FCC)による両社の合併承認が遅れているからだ。

FCCの審査には申請から半年以内に結論を出す「180日ルール」があり、2018年12月末までには結論が出るはずだった。ところが「両社の合併が市場寡占による弊害が生じる可能性がある」として業界団体や消費者団体、議会から猛反発を受け、いまだに結論が出ていない。

皮肉にも猛烈な反対を引き起こした原因は、孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長が進めてきたスプリントの低料金戦略にある。合併に異議を唱える米ルーラル・ワイヤレス・アソシーエションは、スプリントの回線を利用する仮想移動体通信事業者(MVNO)で組織する地域携帯事業者団体。これまでスプリントの通信料金は業界最安値だったが、TモバイルUSとの合併で値上げが懸念されるとして強硬に反対しているのだ。

孫会長兼社長が進めてきた低料金戦略が売却の足かせに(同社ホームページより)

消費者団体も合併に伴う料金値上げを問題視しており、米司法省とFCCに圧力をかけている。万一、合併が「ご破算」となれば、ソフトバンクグループは多額の負債を抱えるスプリントという「お荷物」を再び抱え込む上に、目前に迫った第5世代(5G)移動体通信への巨額投資を迫られる。

もっとも、スプリントは5G通信でデータ容量が大きい(その半面、基地局のカバー範囲が狭い)高周波数帯免許では米国最大の保有会社だ。データ容量が小さい(その一方で、基地局のカバー範囲は広い)低周波数帯免許が中心のTモバイルUSにとっては、スプリント買収なくして5Gでの生き残りが難しいのも事実。FCCも合併なくしてスプリントの存続は難しいのは百も承知で、承認せず「見殺し」にする可能性は低い。

ただ、こうした事態を受けてスプリント株は2019年4月8日に5ドル77セントと、TモバイルUSの買収提示価格を約20%も下回り、TモバイルUSにとっては「高い買い物」になりつつある。米金融業界では、これを嫌気したTモバイルUSが「当局による承認遅れ」を口実に、合併を白紙に戻すのではないかとの観測も出ている。

TモバイルUSの親会社であるTモバイルは、タフなビジネス交渉で知られるドイツ企業。スプリントが必要なのには変わりないが、財務状況が厳しいソフトバンクグループの足元も見ているはずだ。一旦合併をリセットして、より低い価格(有利な株式交換比率)での買収に向けて交渉を仕切り直す可能性もある。

そうなれば、ソフトバンクグループの財務にも影響を及ぼしかねない。ソフトバンクグループは社運を賭けたスプリントの「売り逃げ」に成功できるのか。米国でのシェア拡大を目指した「低料金戦略」が足を引っ張るようなら、ソフトバンクグループとしては「高くついた」ことになりかねない。

文:M&A online編集部


M&A Online編集部

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