「米アップルが超大型M&Aに乗り出すのではないか?」との観測が急浮上している。もちろんアップルがM&Aに手かずだったわけではない。記憶に新しいところでは2014年に、ヘッドフォンなどの音響機器を手がける米ビーツ・エレクトロニクスを30億ドル(約3345億円)で買収している。

アップル最大のM&Aは、ヘッドフォンなどを手がけるビーツの30億ドル(Photo by Rodeen_M)

「超大型」M&Aに消極的だったアップル

しかし、2018年だけをみても、移動体通信事業者の米Tモバイルが同業の米スプリントを586億ドル(約6 兆5300億円)で買収したり、メディア大手の米コムキャストが有料放送局の英スカイを484億ドル(約5兆3900億円)で買収したりと米国企業が華々しい買収劇を繰り広げているのに比べれば、時価総額が世界でもトップ3に入るアップルのM&Aは消極的にみえる。

取得価額もアップルとしては最大となるビーツ買収の30億ドルは決して小さくはないが、近年「超大型」と呼ばれる買収の10分の1以下にすぎない。たとえば2018年の武田薬品工業によるアイルランドのシャイアー買収の取得価額は768億ドル(約8兆7600億円)だった。

もともとアップルは創業時から、少数の製品で高いシェアを獲得する経営方針で成長してきた会社だ。「創業者のスティーブ・ジョブス氏が指揮をとっていた時代に比べれば、商品ラインナップは膨張している」との批判もあるが、それは廉価版モデルの展開など「枝葉」の部分にすぎない。「幹」となる商品群はスマートフォンの「iPhone」、タブレット端末の「iPad」、パソコンの「Mac」の3つに絞られる。

あとはアクセサリー(周辺機器)的な腕時計型ウェアラブルコンピューターの「Apple Watch」やネット放送受信用セットトップボックスの「Apple TV」ぐらいだ。つまり、アップルは「深く狭く」のビジネスモデルゆえに、M&Aによる一気呵成型の事業拡大は必要なかったといえるだろう。そのアップルに、なぜ「超大型M&Aに乗り出す」説が急浮上するのか?