中堅印刷会社の廣済堂(東証1部)は9日、同社に対して米投資ファンドのベインキャピタルが前日まで実施していたTOB(株式公開買い付け)が予定数まで株式が集まらず、不成立に終わったと発表した。
TOBへの応募株式数は544万3164株にとどまり、買付予定数の下限だった1245万6800株(所有割合50%)の目標を大きく下回った。廣済堂株価が買付価格の700円を上回ったまま高値で推移したことがTOB不成立につながった。大半の株主にとってTOBに応募するより、市場で売却する方が有利だからだ。
9日の廣済堂株価はTOB不成立を受けて7営業日ぶりに800円台を割り込んだ。
廣済堂をめぐっては4月18日を期限とし、旧村上ファンドの関係企業による対抗TOBが進行中。この対抗TOBについて廣済堂は意見表明を留保しているが、今後、取締役会として賛成か反対かの意見を形成するとしている。
廣済堂へのTOBは土井常由社長ら経営陣の要請に基づくMBO(経営陣が参加する買収)の一環として計画。ベインキャピタル傘下のBCJ-34(東京都千代田区)が買付主体となり、1月18日からTOBを開始した。買付価格の1株610円で、TOB公表前日の株価の終値に約44%のプレミアムを加えたことから、TOBは比較的に容易に成立するとみられていた。
ところが、応募株式数は目標の半分にも届かず、TOBは不発に追い込まれた。この間、買付期間は3度延長され、55営業日という異例のロングランとなっていた。
TOBの流れを変えるきっかけは旧村上ファンド系企業レノ(東京都渋谷区)と南青山不動産(同)の“参戦”。2月に入って廣済堂株の買い集めが判明した。買付価格引き上げの思惑が広がり、株価が急上昇し、TOBの先行きががぜん不透明になった。3月初めに、廣済堂陣営は買付価格を90円上げて700円とした。買付予定数の下限も当初の66.67%から50%に下げ、TOB成立のハードルを下げた。
その後も廣済堂株価が買付価格を上回る高値で推移する中、3月下旬、今度は当の旧村上ファンド系企業(廣済堂株式13.47%保有)が1株750円で対抗TOBの開始を宣言した。買付予定数の下限は約910万株(所有割合50%)としている。買付期間は4月18日までで、当面はこちらの成り行きに注目が集まる。
廣済堂にとってはTOB不成立に伴い、MBOによる非公開化の計画がひとまず頓挫することになる。
1/17 | 廣済堂、米ベインキャピタルと組んでTOBによるMBOを発表 |
1/18 | TOB開始(買付価格610円) |
2/4 | レノの大量保有(5.83%)が判明 |
2/18 | 創業家大株主、監査役の一人がTOBに反対表明 |
2/26 | 3月1日までとしていたTOB期間を3月12日に延長すると発表 |
3/8 | TOB期間を再延長(3月25日まで)、買付価格引き上げ(700円に)など条件変更を発表 |
3/20 | 南青山不動産が対抗TOB(買付価格750円)を22日から実施すると発表 |
3/25 | TOB期間の3度目の延長を発表(4月8日まで) |
4/9 | 廣済堂がTOB不成立を発表 |
4/18 | 南青山不動産による対抗TOB終了 |
文:M&A online編集部
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