出光興産<5019>と昭和シェル石油<5002>の経営統合が基本合意から3年を経て、ようやく実現する見通しになった。両社は10日、2019年4月1日に経営統合することを決定したと発表した。ただ、その方法は当初想定されていた合併ではない。出光が昭和シェルの発行済み株式のすべてを株式交換で取得し、完全子会社化する内容。統合に際し、「対等の精神」を強調する両社だが、なぜ、親子関係を選択し、合併が避けられたのか?

統合スキーム株式交換による完全子会社化

M&Aの手法には合併株式譲渡事業譲渡会社分割株式交換株式移転などがある。

今回の出光と昭和シェルの統合に用いる株式交換は自社の株式を対価として相手の全株式を取得する。株式取得に現金を必要としないメリットがある。株主総会株式交換が承認されれば、すべての株主は交換に応じなければならない。TOB株式公開買い付け)や市場での買い付けだと、すべての株式を取得することが実際不可能なので、少数株主を排除して100%の完全子会社化にしたい場合に株式交換が活用される。

一方、株式交換では、株式譲渡と同様に、買収した側とされた側で親会社と子会社という上下関係が生まれる。今回のケースでは出光が親会社、昭和シェルが子会社ということになる。

「形式は親子だが、中身は合併。実質が大事だ」。出光の月岡隆会長は会見でこう強調した。統合に反対してきた創業家の合意を得るためにも形式上は譲歩する代わりに、形式はともあれ統合実現という実利を優先したものとみられる。

「対等」強調するなら、合併や共同持ち株会社の選択肢も

実際、統合後の出光の取締役は出身母体によらない公平で実力本位・適材適所の人選を行うとし、昭和シェルが3人、出光が5人(うち2人は創業家から推薦)を指名する。まさに“対等合併”というわけだ。ビジネス上の呼称(トレードネーム)についても「出光昭和シェル」を用いるという。

合併を選択するとどうなるのか。言うまでもなく、合併は企業結合の最強の形。文字通り複数の企業が一体化することであり、規模が同程度あれば、比較的対等な立場で統合が可能になる。その場合、社名は今回トレードマークとして用いる「出光昭和シェル」といった折衷型になりがちで、長年の出光興産の名前は消える可能性が高い。

近年は、「〇〇ホールディングス」という社名をよく見かけるように、共同持ち株会社を活用した経営統合が増えている。合併と違って、統合に参加する会社がそのまま残り、比較的な対等な立場を維持しやすいが、この方式は見送られた。