富士フイルムホールディングス(HD)<4901>による米ゼロックス買収に「黄信号」が灯っている。米ゼロックスが5月1日、富士フイルムHDの買収計画について撤回を含めて見直すと発表した。買収に反対してきたゼロックスの大株主2人との和解案として、今回の買収交渉を主導してきたジェフ・ジェイコブソンCEO(最高経営責任者)ら経営陣が退任し、後任に反対派が推す候補が就くことになった。4月末には米裁判所が買収差し止めの仮処分を決定しており、法廷闘争も待ち構える。富士フイルムHDの戦略に急ブレーキがかかったことで、9月までに買収を完了するスケジュールは断念せざるを得ない情勢だ。

買収計画に立ちはだかる“物言う株主”の存在

富士フイルムHDが米ゼロックスの買収を発表したのは1月末。合弁子会社の富士ゼロックスと米ゼロックスを経営統合したうえで、統合新会社の株式の過半数を取得し、子会社化するという内容だった。事務機で米ヒューレット・パッカード(HP)と並ぶ世界トップに立ち、医薬品や医療機器などヘルスケア事業を含めたグループの総売上高は3兆円を大きく突破する構想を描いた。

こうした買収計画をめぐって異論を唱えたのが米ゼロックス株の9%超を持つ筆頭株主カール・アイカーン氏。同じく大株主のダーウィン・ディーソン氏と共同で買収に反対する声明を発表した。さらに米ニューヨーク州の裁判所に買収の差し止めを求めた。アイカーン氏は“物言う株主”として知られるが、「(米ゼロックスを)1セントも支払わずに手に入れようにしている」などと買収スキームについて痛烈に非難した。

富士フイルムHDによる買収金額は6710億円と巨額。だが、現金の外部流出がない独自のスキームを用いる。子会社の富士ゼロックスがまず、富士フイルムHDの保有する全株式(所有割合75%)について6710億円で自己株買いを実施したうえで、米ゼロックスと統合。続いて、富士フイルムHDは富士ゼロックス株の売却で得た6710億円をもとに、統合後の新ゼロックスの新株発行61億ドル(6710億円相当)を引き受ける。同時にゼロックスは既存株主に25億ドル(約2700億円)の特別配当を行い、時価を下げる。これにより議決権ベースで50.1%を取得し、傘下に収める。

これにかみついたのがアイカーン氏らで、「(ゼロックスを)過小評価している」と批判していた。同調する株主が増えれば、買収計画そのものが立ち行かなる可能性もかねて指摘されてきた。

条件変更の可能性も

米ゼロックスの発表によると、ジェフ・ジェイコブソンCEOのほか、取締役6人が退く。富士フイルムHDにとって何といっても痛いのがジェイコブソン氏の退任。富士フイルムHDの古森重隆会長・CEOと長年、盟友関係にあり、買収交渉を進めてきた立役者だからだ。今後、後任の経営陣には買収反対派が推薦する候補者が送り込まれるとみられる。予断は禁物だが、買収の成立に向けては金額などの条件変更を迫られる公算が大きく、駆け引きは激烈となりそうだ。

4月末、米ニューヨーク州裁判所は買収の一時差し止めの仮処分を出した。これに対し、富士フイルムHDは上訴して応戦の構えをみせている。

米ゼロックス・コーポレーション本社(コネチカット州):富士ゼロックス提供