カタログ通販の千趣会 J.フロントとの資本提携を解消

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カタログ通販の千趣会 J.フロントリテイリングとの資本提携を解消

公開日付:2018.05.10

 カタログ通販大手の(株)千趣会(TSR企業コード:570102243、大阪市北区)は4月27日、大丸、松坂屋百貨店などを傘下に持つJ.フロントリテイリング(株)(TSR企業コード:297152963、東京都中央区、以下JFR)との資本業務提携を解消した。
 千趣会は今年2月、地域経済活性化支援機構(REVIC)による投資支援が決定。新たなパートナーと再建に取り組むこととなり、22.6%の筆頭株主だったJFRの持ち株を買い取って資本業務提携を解消した。

 2015年4月にスタートさせた千趣会とJFRとの資本業務提携は、業務上の相乗効果以上の意味合いがあった。ECサイトなどのネット通販に対抗し、百貨店とカタログ通販という旧来型の流通業者がタッグを組み、オムニチャネル化(リアル店舗とバーチャル店舗での販売を連携させた購買スタイル)の浸透を目指した。ECを通じた「実店舗と通販の融合」というキーワードが話題を集めた。
 だが、提携後も千趣会の足もとの業績はおぼつかなかった。2017年12月期の連結業績は売上高1,259億円(前年度比2.4%減)に対し、42億円の営業赤字を計上。減損やリストラに伴う希望退職の実施で最終損失は110億円に膨らんだ。4月27日に開示した2018年度第1四半期決算も、営業損益は赤字だった。印刷コストが嵩み、商品の回転効率が悪いカタログ通販事業からの脱却を至上命題としているが浮上できないまま。
 こうしたなか千趣会は今年2月、REVICの支援を取り付けた。優先株を発行し総額70億円を調達、REVIC側から人材も受け入れた。一方、当社は「ベルメゾン」の実店舗を10店舗ほど展開しているが、千趣会の担当者は「当面はEC事業の強化が優先。育児など得意な分野に磨きをかけ、他社との差別化を図る方針」とコメント。今回の提携解消でオムニチャネル化は遠のいた形だ。

旧来型の通販業者 再建を模索するが...

 実店舗と通販の融合では2016年8月、(株)セブン&アイ・ホールディングス(TSR企業コード:296398926、千代田区)のグループに入った(株)ニッセンホールディングス(TSR企業コード:641095562、京都市南区)にも注目が集まる。カタログ通販「ニッセン」で知られる同社だが、環境変化による顧客離れと採算悪化から業績が低迷。通販事業の黒字化に取り組むが、見通しは明るくない。3月には100%子会社で、ギフト「サラダ館」でお馴染みのシャディ(株)(TSR企業コード:570168414、東京都港区)も売却し、経営の選択と集中を進めている。
 Amazonや楽天などの大手ECモールの存在感は圧倒的だ。さらにAmazonは動画や音楽の配信サービス、楽天は携帯キャリア事業への参入やカード事業の強化に動く。一見、ネット通販の範疇を超えた展開を矢継ぎ早に打ち出しているようだが、すべては顧客の囲い込みによるネット通販の強化に繋がる。
 EC化に乗り遅れた旧来型の通販業者がどこまで太刀打ちできるか、次の一手に注目が集まる。だが、先行するガリバー達に追いつくまでに残された猶予はそう多くはない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年5月11日号掲載予定「Weekly Topics情報」を再編集)

東京商工リサーチ「データを読む」より

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