配達員の手数料が重くのしかかる「出前館」先行投資で赤字拡大

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※画像はイメージです

赤字拡大の出前館

出前館<2484>の赤字が止まりません。2021年8月期第3四半期の売上高は前期比171.0%増の184億9,300万円となりましたが、129億700万円もの営業損失(前年同期は16億800万円の赤字)を計上しました。

純損失額は147億3,400万円(前年同期は18億7,700万円の赤字)。配達員の業務委託手数料が重く、出前館の原価率は30.2%から51.6%まで膨らんでいます。出前館はコロナ後を見越して先行投資を加速する、戦略的赤字で攻めの経営姿勢を貫いています。

この記事では、以下の情報が得られます。

・出前館が戦略的赤字である理由
・出前館の収益構造
・Uber Eats配達員との報酬体系の違い

配達員へのギャラを高く、飲食店への配達手数料は低く

出前館はデリバリー機能を持たない飲食店に対し、自社の配達員を活用して料理を届ける『シェアリングデリバリー』を2017年に本格スタートしました。出前館の売上高が急伸しているのは、この事業が拡大しているためです。

2020年3-5月のこの事業の売上高は7億6,100万円でしたが、2021年3-5月は6倍以上となる46億1,300万円となりました。『シェアリングデリバリー』は配達代行手数料による収入です。一方、出前館のサービス利用料による売上高は17億5,600万円から29億900万円で、コロナ特需に支えられても65.6%の増加に留まりました。

■出前館売上高推移

出前館売上推移グラフ
決算説明資料より

出前館が飲食店から徴収する出前館のサービス利用料は加盟店売上の10%。配達代行手数料は加盟店売上の25%(2021年1月からの新料金体制)に設定されています。仮に2,000円の出前注文が1件入った場合、出前館サービス利用料は200円、配達代行手数料は500円(飲食店への課金。1,500円以上の商品の場合、消費者から配達料を取らないケースがほとんど)となります。

出前館の東京エリアの配達員への報酬は固定報酬型になっており、最低でも715円。配達手数料はマイナスになってしまいます。この料金設定が大赤字の原因の一つになっていると考えられます。

競合のUber Eats(ウーバーイーツ)は距離や時間に応じて報酬額が変動するように設定されており、都内1~2キロ圏内の配達距離であれば、1件当たり300円程度が相場となっています。出前館のインセンティブが強めに設定されていることがわかります。

■出前館売上原価率等の変化

出前館売上原価比率の推移
決算説明資料より筆者作成

業務委託費を含む売上原価率は25.9%から54.2%となりました。人件費率が39.0%から32.5%に下がっているのは、配達員として雇用していたアルバイトなどを業務委託契約に切り替えたためと考えられます。業務委託で成果報酬型にすることにより、将来的に赤字になりにくい組織体系を作ろうとしているのでしょう。

デリバリー市場はコロナ後も伸びると予想

出前館は中長期経営計画で、シェアリングデリバリーの世帯カバー率を目標に掲げていました。2021年8月期で36%の目標をすでに上回る49%を達成しています。この数字を支えているのが業務委託の配達員です。いわば、報酬額を高く設定して配達員を囲い込み、カバーするエリアを拡大していると言えます。

これは新型コロナウイルスという特殊な状況を利用して一息に事業を拡大し、新たな日常に備えているものと考えられます。

市場調査を行うICT総研のフードデリバリーサービスの調査によると、デリバリー市場はコロナ後も縮小せず、拡大する予想を出しています。2020年の4,960億円から2023年には6,821億円まで伸びる見込みです。

フードデリバリーサービス市場 需要予測
出典:ICT総研

攻めの経営姿勢を貫いている背景には、今後も市場拡大が続くと予想しているためと考えられます。

LINEと資本業務提携、出前館に300億円出資

出前館の2021年8月期第3四半期時点の注文総額は1,138億円。先ほどの市場規模に当てはめると30%程度の市場規模を持っていることになります。圧倒的シェアが獲得できれば、優位に駒を進めることができます。

仮に配達員への報酬額を引き下げても、不満や離反に繋がりにくくなります。配達案件そのものが多ければ、配達員1人の1日当たり稼ぎは変わりづらいためです。加盟店への交渉力も高まり、配達代行手数料25%を引き上げることも視野に入ります。

そもそも、出前館の配達手数料は商品代金の30%に設定されていました。2021年1月にこれを引き下げたのです。

出前館は2020年3月に、Zホールディングス<4689>と経営統合したLINEグループと資本業務提携契約を締結すると発表しました。LINEグループが出前館に300億円を出資したのです。

LINEは2021年2月の段階で出前館の株式36.83%を保有しています。出前館は潤沢な資金をバックに戦略的な赤字で配達員と飲食店の囲い込みを進めています。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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