酒販大手やまやが赤字転落、はなの舞のれん減損64億円で

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のれん減損を迫られたやまや

酒販大手やまや<9994>が2021年3月期第3四半期で72億9,300万円の純損失(前期は21億2,300万円の黒字)を計上しました。2013年に子会社化した居酒屋はなの舞の運営会社チムニー<3178>ののれん64億200万円の減損損失を計上したためです。

チムニーは、2021年3月期第3四半期の売上高が前期比66.3%減の109億8,500万円となり、68億円の純損失を計上していました。居酒屋企業を買収した会社ののれんの減損損失は今後も広がる可能性があります。

この記事では以下の情報が得られます。

・やまやとチムニーの業績
・チムニーが他社と比較して業績が悪い理由
・居酒屋企業を買収した会社


居酒屋の中でも苦しさが鮮明になっているはなの舞

やまやは2021年3月期の売上高を前期比10.3%減の1,509億1,400万円、純損失を89億2,600万円(前期は2億500万円の黒字)と予想しています。

やまやは2020年3月期も子会社のチムニーに足を引っ張られていました。この期は純利益が2億500万円でかろうじて利益を出したものの、前期比で93.6%も減少していたのです。これは主に新型コロナウイルス感染拡大で影響を受けた不採算店の退店に伴う特別損失を計上したためです。

■やまや業績推移(単位:百万円)

2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期予想
売上高 168,960 167,750 168,168 150,914
前期比 1.0%増 0.7%減 0.2%増 10.3%減
営業利益 7,411 6,894 4,163 -2,338
前期比 41.0%増 7.0%減 39.6%減 -
純利益 3,393 3,216 205 -8,926
前期比 93.6%増 5.2%減 93.6%減 -

決算短信より筆者作成

緊急事態宣言の発令で外出が制限されたことにより、家庭でのアルコール消費量は増加しました。総務省統計局による家計調査では、2020年1世帯当たりの月間平均支出額は27万7,926円と前年比5.2%減少しているものの、酒類の支出額は3,700円で前年比16.2%もの増加となっています。

こうした外的要因を受け、やまやの主力である酒販事業も好調です。第3四半期の売上高は前期比11.5%増の1,049億9,300万円、営業利益は53.6%増の52億3,300万円でした。業績不振の直接的な原因はチムニーです。

大規模な業態転換に踏み切れないチムニー

チムニーは居酒屋の中でもコロナの影響を大きく受けた企業の一つです。理由は2つ。1つはビルの空中階に出店して、客単価の高い宴会客を積極的に取り込んでいたことです。三密回避で宴会がなくなり、集客力を急速に失いました。

苦境に陥ったもう1つの要因はインバウンド需要が消滅したことです。チムニーは、店内に土俵を設置するなど他にはない特徴的な店づくりをしており、刺し身や寿司などにも強かったため、海外観光客に人気がありました。

下表売上高の減少幅に注目してください。ワタミ<7522>は33.3%の減少。チムニーと同じくビルの空中階を中心に出店する「塚田農場」のエー・ピーホールディングス<3175>でも59.7%の減少に留めています。

■居酒屋企業コロナ禍業績比較(単位:百万円)各社とも2021年3月期・第3四半期

チムニー ワタミ エー・ピー
売上高 10,985 46,521 7,316
前期比 66.3%減 33.3%減 59.7%減
営業利益 -4,682 -6,924 -2,529
純利益 -6,800 -8,539 -2,867

※各社決算短信より筆者作成

ワタミは新常態に合わせ、居酒屋から焼肉店への業態転換を猛スピードで進めています。売上の減少幅を小さく抑えているのは、焼肉店やから揚げ店など新業態を次々と投入していることが挙げられます。チムニーや塚田農場は食堂へと業態転換を図っているものの、今のところ目覚ましい成果は出ていません。大戸屋ややよい軒のように国民的な認知を得られていない上、空中階に多く出店しているため、集客に苦戦していると考えられます。

さらにチムニーは海鮮業態からの大転換を図りにくい会社です。卸売市場のせりに参加する買参権の取得や漁業会社の設立など、仕入れから販売までを一貫して行う取り組みを推進していたためです。チムニーは2018年11月につぼ八(台東区)の34%の株式を取得して持ち分法適用関連会社としましたが、背景には鮮魚などの食材の卸先を拡大することがありました。

チムニーは2019年12月に焼肉店「牛星」を運営するシーズライフ(渋谷区)を買収しています。しかし、鮮魚の一大インフラを構築してしまったチムニーが、焼肉店への大規模な転換を図るとは考えられません。居酒屋と食堂の二毛作で忍耐強く需要回復を待つことになります。

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居酒屋「はなの舞」などを展開するチムニーが、食事需要や家族利用に対応するため、焼肉店の「牛星」や、大衆食堂の「安べゑ」「出世街道」、海鮮料理の「はなの屋」などの新業態への転換を急いでいる。