居酒屋「はなの舞」や「さかなや道場」を運営するチムニー<3178>が、苦戦する居酒屋企業の中でも一段と深刻な事態に見舞われています。2021年3月期第2四半期の売上高は前期比71.3%減の61億2,500万円。経常損失は27億1,600万円となりました。
ワタミ<7522>、鳥貴族ホールディングス<3193>、串カツ田中ホールディングス<3547>の同期間の売上減少幅は30%台です。チムニーは競合他社に倍以上も水をあけられました。チムニーはなぜそれほどまでに苦戦を強いられているのでしょうか。
背景には米投資ファンド「カーライル」が支援したMBOによって積み上がった、のれんの存在がありそうです。この記事では、以下の情報が得られます。
・チムニーと競合他社のコロナ禍業績比較
・チムニーの弱点
チムニー、ワタミ、鳥貴族、串カツ田中の業績を比較します。コロナ禍での業績を比較するため、7月決算の鳥貴族は5月1日-10月31日まで、11月決算の串カツ田中は3月1日-8月31日、3月決算のチムニー、ワタミは第2四半期累計(4月1日-9月30日)でみてみます。
■居酒屋企業コロナ禍業績比較(単位:百万円)
売上高 | 経常利益 | |
チムニー (4月1日-9月30日) |
6,125(71.3%減) | △2,716 |
ワタミ (4月1日-9月30日) |
28,627(36.9%減) | △5,513 |
鳥貴族 (5月1日-10月31日) |
10,741(37.9%減) | △269 |
串カツ田中 (3月1日-8月31日) |
3,474(34.1%減) | △98 |
※決算報告書より筆者作成
チムニーは70%以上も減少しました。「はなの舞」などと同じ総合居酒屋で、出店形態も近いワタミと比較してもその差が大きいのは一目瞭然です。チムニーの売上が急減した理由は明確です。この期間に大量の退店を行ったためです。
チムニーはコロナ禍で49店舗もの退店をしました(今期は合計で72店舗の閉店を計画しています)。ワタミは91店舗を退店したものの54店舗を出店し、差し引き37店舗の退店です。鳥貴族は20店舗の退店、串カツ田中は28店舗を退店し、31店舗を新規出店しています。差し引きは3店舗の新規出店となります。
コロナの影響が大きかった居酒屋企業がとるべき戦略は大きく2つです。1つ目は需要回復を待つこと。同業態の出店と退店を同時に行った串カツ田中が顕著な例です。不採算店の小規模退店に留まった鳥貴族も同じです。2つ目は新たな需要をとりにいくことです。居酒屋から焼肉へと業態転換したワタミがこれに該当します。現在、食堂や焼肉店に転換を進めているチムニーもここに入ります。ただし、チムニーは先行して大量の閉店を仕掛けました。ワタミのように出店、退店、業態転換を組み合わせなかったのはなぜでしょうか。
チムニーの売上の戻りが競合と比較して極めて遅く、多額ののれんを抱えたチムニーは減損を嫌って早期撤退を行ったものと考えられます。