カクヤスが26億円の営業赤字 「禁酒法」で苦境はまだ続くか

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業務用卸が売上の70%を占めていたカクヤス

酒類販売のカクヤスグループ<7686>の業績に急ブレーキがかかりました。2021年3月期の売上高が前期比26.1%減の802億2,600万円となり、26億200万円の営業損失(前期は12億5,900万円の黒字)を計上しました。純損失は16億100万円(前期は5億1,300万円の黒字)となり、自己資本比率が18.1%から11.9%まで急減しています。

この記事では以下の情報が得られます。

・カクヤスの業績
・1世帯当たりの月間酒類支出額
・カクヤスの財務改善策

家庭用酒販は好調でも業績にブレーキ

カクヤスは売上高の70%が居酒屋などの業務用で占めており、飲食店に対する休業・時短要請の影響を強く受けた会社となりました。緊急事態宣言の影響は、飲食企業以外にも広がっています。

一方で、カクヤスの家庭用酒類の販売は好調でした。2021年3月期が373億8,500万円となり、前期比19.1%増加しています。最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、家庭用の月次売上高はすべての月で前年を上回っています。

■カクヤス売上推移

カクヤス売上推移

これは居酒屋をはじめとした飲食店の休業、時短営業へと追い込まれ、家庭でのアルコールを消費する習慣がついたためです。

総務省統計局の「家計調査」によると、2020年の1世帯当たり酒類の月間平均支出額は3,857円。過去5年平均の13.2%増となりました。

■1世帯あたりの酒類月間平均支出額(2020年、単位:円)

1世帯あたりの酒類月間平均支出額


2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
3,442円 3,409円 3,415円 3,361円 3,394円 3,857円

総務省統計局「家計調査」より

消費者向けが好調だったのは、競合のやまや<9994>も同じです。2021年3月期の消費者向け酒販事業の売上高は前期比10.5%増の1,348億5,700万円となりました。

カクヤスの主力となる業務用の2021年3月期売上高は前期比44.6%減の426億円となっています。2020年10月は飲食業界の救済措置の一つ、Go To Eatキャンペーンが実施されたものの、売上は前年を上回りませんでした。2021年1月は2度目の緊急事態宣言が発令され、再度下押し圧力にさらされています。

■カクヤス業績推移(単位:百万円)

カクヤス業績推移

カクヤスは2022年3月期の売上高を前期比25.3%増の1,040億7,900万円と予想しています。緊急事態宣言に入る直前の2020年3月期の売上高1,085億6,200万円と比較して4.1%減の予想です。やや強気な予想だといえます。

退店を進める大手居酒屋チェーン

カクヤスは2020年3月末時点で、チムニー<3178>、東天紅<8181>、海帆<3133>、ヴィア・ホールディングス<7918>の株式を保有しています。これらの銘柄は、主要取引先としての関係強化を目的として保有しているものです。

主要取引先各社は急速に退店を進めています。昭和食堂を運営する海帆に至っては、2020年3月末と比較して60%以上も少なくなりました。

■チムニー、海帆、ヴィア・ホールディングス直営店 店舗数増減率

※各社決算短信より筆者作成

東京商工リサーチによると、大手居酒屋チェーンの店舗数は2020年で12.5%減少しました。チムニー、ヴィア・ホールディングスなどの既存大口営業先が20%減、全国的にも10%前後店舗数が減少しており、退店がカクヤスの業績に与える影響は計り知れません。新たな卸先を開拓するにしても、見通しの立たない居酒屋業界の状況を考えると、そう簡単にはいかないでしょう。

更に3回目の緊急事態宣言が発令されました。従来の時短営業だけでなく、東京都では酒類の提供を禁止しています。酒類を提供するカクヤスには大打撃となります。長期戦への備えが必要です。

5月に資金調達を実施

カクヤスは伊藤忠食品(大阪市)と三菱食品(文京区)を割当先とした、第三者割当増資を実施します。5月28日を支払期日とし、22億1,800万円を調達する予定です。これにより、カクヤスの純資産額は54億3,100万円となり、自己資本比率は20%台まで回復します。

今期は拠点数を増やして一般的な認知を高め、消費者の取り込みに注力するとしています。創業100周年にもあたる2021年は、銘酒のショッピングモールも開設する予定です。居酒屋の需要回復にはまだまだ時間がかかり、カクヤスは厳しい戦いを強いられそうです。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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