飲食店開発のアスラボが倒産、JR東日本との資本提携からわずか1年で

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飲食横丁の開発プロデュースや出店支援を行っていたアスラボ(港区)が4月30日に自己破産申請をしました。アスラボは2020年6月にJR東日本の子会社でコーポレートベンチャーキャピタルのJR東日本スタートアップ(新宿区)と資本業務提携を締結したばかりでした。

同社は過去に東急電鉄が主催する事業共創プログラムのセッションで最優秀賞を受賞するなど、地方創生の注目株でした。そして、新型コロナウイルスの影響を真正面から受けたスタートアップの一つといえます。

この記事では以下の情報が得られます。

・アスラボのビジネスモデル
・倒産へと至った理由
・JR東日本スタートアップが出資した背景

不動産投資業がビジネスモデルのベースに

アスラボは2010年6月設立。当初はシェアハウスなどの不動産開発や運営管理を行っていました。2015年から商店街に複数の飲食店を集めて「横丁」として再生するビジネスへと参入します。

創業者の片岡義隆氏は米不動産投資会社AIGグローバルリアルエステート出身で、会社員時代に飲食業界での経験はありません。特異なビジネスモデルを確立した背景には、業界の常識にとらわれない視点がありました。

アスラボの主力事業は、横丁をプロデュースして出店支援をすることです。第一弾となったのが2015年に開業した山梨県甲府市の「甲府ぐるめ横丁」。昭和の時代にキャバレーやスナックなど48店舗が軒を連ねていた「芳野ビル」を再生させる案件として着手しました。

当初はビルをリニューアルして飲食店を呼び込もうとしたものの、出店費用の問題で躊躇するオーナーが続出しました。そこで、店舗の作りこみや厨房設備の設計はアスラボが一手に引き受け、複数の店舗が共同で厨房を利用できる仕組みを構築したのです。それにより飲食店や料理人は低投資で店を出せるようになりました。

アスラボはこの成功事例を他の町にも広げました。旭川市、宮崎市、高崎市、鹿児島市など、主に地方都市で横丁ビジネスを展開し、地方創生のスタートアップとして注目を集めます。

横丁は設備投資を最低限に抑え、20万円の初期投資で出店できることを前面に押し出しました。この手軽さに個人事業主である料理人が飛びつき、横丁のテナントが埋まる状況が続きました。アスラボは飲食業界からも注目を集める存在となります。2018年9月期の最盛期には20億円の売上がありました。

多額の先行投資が倒産の引き金に

アスラボは飲食店が集まる場所を作って運営者を募り、収益を得るテナントビジネスです。開発のために多額の先行投資が必要になります。これが後に倒産のトリガーとなります。

アスラボは地方都市の横丁開発に一区切りをつけ、都市部へと進出しました。それが2021年3月28日にオープンした新大久保フードラボの「Kimchi,Durian,Cardamom,,,(キムチドリアンカルダモン;KDC)」でした。

新大久保駅
Photo by フリー写真素材ぱくたそ

新大久保のプロジェクトは、コロナ前からコンセプトの立ち上げや設計を進めており、アスラボの未来を切り開く重要なプロジェクトの一つとなっていました。そこに新型コロナウイルスが襲い掛かります。

2020年春にオープン予定だった「和歌山横丁」「高崎横丁」「水戸フードホール」の開業がストップ。すでに開発資金を投じていたアスラボは大打撃を受けます。

2020年6月にコーポレートベンチャーキャピタルのJR東日本スタートアップから出資を受けたのは、経営危機に瀕したアスラボ救済の意味合いが強かったものと考えられます。新大久保のプロジェクトは、JR東日本にとっても失敗できないものだったからです。

現在、JR東日本は「東京感動線/TOKYO MOVING ROUND」という大型プロジェクトを進行中です。これは山手線沿線の駅を従来の移動や消費を中心とした場所ではなく、感動体験ができるものに作り替えるというものです。

新大久保駅直結の「新大久保フードラボ」は、多国籍な料理が集まる飲食ビルとしての機能だけでなく、一般の人々にキッチン・ダイニングを開放して新たな食体験を創出する話題性の高いものでした。開業まではアスラボの推進力が必要不可欠だったのです。

低投資での出店がコロナ後のトレンドに

アスラボは低投資で出店できるという、コロナ時代を先取りしたようなビジネスモデルでした。今後も低投資での出店を希望するオーナーは増えると考えられます。現在、アスラボを追随するように、その需要にマッチするサービスが展開されるようになりました。

飲食店の建築などを手掛ける山翠舎(長野市)は2021年3月に山翠舎賃貸(渋谷区)を設立し、敷金と保証金を半額にするサービスを開始しました。同社は資金調達支援や事業計画作成のサポートも行います。外食を取り巻く環境が大きく変化するコロナ後の店舗運営は、新しい発想やアイデアが必要になります。こうしたサポートを得ることで、畑違いでも出店しやすい土壌が作れます。

飲食店のコンサルティングなどを行うムジャキフーズ(渋谷区)は、店舗を運営したい人と運営委託希望者を結ぶサービス「店タク(テンタク)」を2021年1月にスタートしました。新型コロナウイルス、緊急事態宣言の発令により、飲食店の長期的な経営難易度は著しく上がっています。事業承継問題の解消と飲食経営の挑戦者を結ぶサービスです。

自己破産という結果になりましたが、アスラボが切り開いた低投資出店というスタイルが飲食業界に一石を投じたことは間違いありません。コロナという不運に翻弄された外食スタートアップといえるでしょう。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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