大戸屋が債務超過転落、前例のない優先株のみの公募増資に踏み切るか

alt
新型コロナウイルスで50%台に落ち込んだ売上は10月に88.8%まで回復

敵対的TOBでコロワイド<7616>の連結子会社となった、大戸屋ホールディングス<2705>が2021年3月期第2四半期で14億9,500万円の債務超過となりました。新型コロナウイルスの感染拡大によって売上高が前期比40.5%減の73億3,200万円となり、46億5,400万円の純損失を計上したため。大戸屋は本業立て直しのため、12店舗の退店やFC5店舗の直営化など合理化を進めています。

目先の債務超過解消のため、コロワイドは手早い一手を打ちました。株主優待を厚くして株価を引き上げたのです。更に種類株式の発行を可能とする定款変更へと駒を進めました。これは議決権のない種類株による公募増資で資金を調達し、債務超過解消を狙っていると考えられます。外食企業で初となる敵対的TOBを仕掛けたコロワイドは、またも前例のない無議決権の種類株による公募増資に踏み切る可能性が高くなりました。

この記事では以下の情報が得られます。

議決権のない種類株で増資する理由
・優先株を上場させた伊藤園の事例

なぜ議決権のない株式で公募増資をするのか

セントラルキッチンか店内調理かが争点となったTOB(画像はイメージ:Photo by PAKUTASO)

まず、コロワイドと大戸屋ホールディングスのこれまでの流れを一通り説明します。

居酒屋「甘太郎」や「牛角」、「かっぱ寿司」などを運営するコロワイドは、日常食業態の大戸屋ホールディングスを敵対的TOBによって連結子会社化しました。コロワイドは2019年10月に大戸屋の創業家から19.16%の株式を譲り受けていました。その後、大戸屋の現経営陣に買収提案などを行うものの、拒否されたためにTOBという強硬手段に出たとされています。コロワイドは居酒屋、焼肉、寿司などの非日常食が中心の業態を展開してきました。新型コロナウイルスによって非日常食業態の需要が急減したため、食堂を運営する大戸屋の買収を急いだことも背景にあると考えられます。

コロワイドは51%の取得を目指していましたが、結果的に保有できたのは46.77%に留まりました。コロワイドの保有比率は決して高くありません。

連結子会社化してすぐに大戸屋は15億円ほどの債務超過に転落しました。大戸屋は通期で48億6,600万円の純損失を見込んでおり、債務超過額は更に膨らむと見られます。本業での早期解消はできません。これが今回のポイントの1つ目です。

そうすると、公募増資か金融機関・投資ファンドなどへの第三者割当増資によって資金調達をするのが一番の近道です。大戸屋は2020年3月末時点で発行可能株式総数がおよそ2,900万株あります。大戸屋の株価は2,000円台で推移しています。単純計算ですが、仮に500万株を1,500円で発行すれば75億円ほどの調達ができます。しかし、これはコロワイドにとって明らかな悪手となります。なぜなら、大戸屋の発行済み株式総数は9月末の段階で720万株ほど。増資による希薄化が生じてしまい、コロワイドの保有比率が27.7%に下がってしまうのです。これでは、敵対的TOBを仕掛けてまで保有比率を高めた意味がありません。これがポイントの2つ目です。

そうであれば、コロワイドグループ内の子会社が第三者割当増資を引き受ければ良いと考えるかもしれません。しかし、どの子会社もコロナ禍を乗り越えるために必死です。

「カッパ寿司」のカッパ・クリエイト<7421>の2021年3月期第2四半期の純損失は18億6,800万円。純資産額は102億1,200万円です。「ステーキ宮」などを運営するアトム<7412>の2021年第2四半期の純損失は9億8,400万円で、純資産額は113億4,800万円です。両社ともに自己資本にはまだ厚みがあるものの、赤字はこの先も継続する見込みであり、長引くコロナ禍での退店や業態転換のクッションとなる自己資本を薄くしたくはないはずです。本体のコロワイドも2021年3月期第2四半期で57億8,800万円の純損失を計上しており、純資産額は295億8,000万円。自己資本比率は11%で、業界の平均的な水準といわれる14%を下回りました。

加えて、敵対的TOBで焦点となっていた大戸屋の経営陣刷新にコロワイドは成功しており、これ以上グループ全体での保有比率を高めることにはあまり意味がありません。これがポイントの3つ目。グループで大戸屋の第三者割当増資を引き受けるインセンティブが低い状態なのです。

NEXT STORY

【コロナ禍の外食M&Aまとめ】ノンコアの切り離しが加速

【コロナ禍の外食M&Aまとめ】ノンコアの切り離しが加速

2020/10/09

新型コロナウイルスの感染拡大で飲食業界に激震が走りました。その一方で、火中の栗を拾うように外食企業のM&Aも盛んに行われています。売り手の多くはノンコアの外食事業の切り離し。買い手は外食を専門で手掛けていた企業や経営者です。

関連のM&Aニュース