英国風パブHUBがeスポーツ「モンスト」観戦の一大聖地となる日

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苦境に陥ったロイヤルホールディングスがHUBの株式を売却

ミクシィ<2121>が英国風パブのHUB<3030>の筆頭株主となります。HUBの10億円分の第三者割当増資を引き受け、更にロイヤルホールディングス<8179>が保有する5.5億円分の株式を譲受。これにより、ミクシィの保有比率は20%となって筆頭株主だったロイヤルホールディングスを上回ります。

ゲーム開発のミクシィとパブの組み合わせは、一見ちぐはぐな印象を受けます。しかし、その狙いは明確。ミクシィは大ヒットゲーム「モンスターストライク」のeスポーツ大会を運営しており、HUBはスポーツ観戦バーを軸に集客しています。ミクシィはリアル店舗を手にすることでゲームユーザーやeスポーツ観戦のすそ野を広げることができます。HUBはゲーム好きの新たな顧客層にリーチすることができるのです。

また、ミクシィは公営競技などのスポーツ分野にも進出しており、スポーツ観戦バーは多チャンネル化にうってつけの場所でした。ミクシィがHUBを持分法適用会社としたことは、極めて戦略的なものといえます。

この記事では以下の情報が得られます。

・ミクシィがHUBを子会社化した理由
・HUBが他の飲食店とは違う点
・ミクシィとHUBの相乗効果

“スポーツ”分野に活路を見出したミクシィ

HUBはスポーツ観戦バーとしても親しまれている

まずはミクシィの業績をもとに事業構造を見てみます。

2021年3月期の売上は前期比7.0%増の1,200億円、営業利益は10.8%増の190億円を予想しています。第3四半期の売上は21.2%増の877億3,700万円、営業利益は405.9%増の154億6,100万円となりました。

新型コロナウイルスによる巣ごもりが定着し、主力のモンスターストライクが絶好調。業績の底上げに寄与しています。

ミクシィは大きく3つの事業に分かれています。主力となるゲーム開発の「デジタルエンターテインメント事業」、競輪の車券販売サービスのチャリ・ロトや競馬情報のネットケイバドットコムを運営する「スポーツ事業」、SNS「mixi」を軸とした「ライフスタイル事業」です。

第3四半期の各事業の業績は以下のようになっています。スポーツとライフスタイルは利益が出ておらず、驚異的な利益率でゲームが会社の成長を牽引しています。

■ミクシィ2021年3月期第3四半期 事業別業績(単位:百万円)

事業分野 売上高(百万円) セグメント利益(百万円) 利益率 売上構成比率
デジタルエンターテインメント
74,027
31,731
42.9%
84.4%
スポーツ
8,866
-4,448
-
10.1%
ライフスタイル
4,843
-22
-
5.5%

ミクシィ2021年3月期決算短信より筆者作成

ミクシィは「コトダマン」や「スタースマッシュ」といったゲームもリリースしていますが、稼ぎ頭は「モンスターストライク」です。一本足といっても過言ではないほどのヒット作です。

ミクシィはモンストユーザーを拡大する活動を早くから始めていました。その一つがeスポーツ大会「モンストグランプリ」を運営するXFLAGです。eスポーツは、流行語大賞にランクインした2018年が“元年”と呼ばれていますが、モンストグランプリはその3年前の2015年に始まっています。早くから期待をかけていた分野なのです。

新型コロナウイルス感染拡大前に幕張メッセで開かれた「モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップ」は、1万5千人の観戦者を集めました。YouTube Liveでの同時接続者は14万人以上。賞金総額1億円という注目度も重なり、異常なほどの熱狂ぶりを見せたのです。

まだまだなじみのないeスポーツと聞くと、一過性の“おたく”の趣味と捉えられがち。しかし、国内外で見逃せないビジネス分野に成長しています。KADOKAWA Game Linkageの調査によると、日本のeスポーツの市場規模は2019年で61億1,800万円。2023年には153億3,400万円まで成長する予測を立てています。

日本eスポーツ市場規模

日本eスポーツ市場規模
「2019年日本eスポーツ市場規模は60億円を突破」より

また、動画視聴を含む観戦者も年々増加し、2023年には1千万人を超えて12,148人になるとしています。

日本eスポーツファン数

日本eスポーツファン数
「2019年日本eスポーツ市場規模は60億円を突破」より

eスポーツは一つの大きな産業として成立しようとしているのです。

スポーツの一大イベントで儲けを出すHUB

HUBはパブの一つとみられていますが、実はスポーツ観戦バーとしての役割が色濃く出ています。

下の表は2019年3月から2020年2月までのHUBの月次売上です。2019年9月と10月の売上が全店・既存店ともに120%を超えています。このタイミングで開催されていたのが、「ラグビーワールドカップ2019」です。

HUB月次店舗実績(2020年2月度)

HUB月次報告書(2020年2月度)
株式会社ハブ「2月度 月次速報についてのお知らせ」より

HUBは通常のパブのようにふらりと来店する客だけではなく、スポーツ観戦を目的とした客を捕まえることに成功しています。それが他の居酒屋にはない強みの一つです。

HUBとしては、盛り上がるスポーツイベントが増えてそれを目的とした客が来店すれば売上増につながります。eスポーツがまさにそれです。ミクシィは多くの人にモンストを認知してもらい、ダウンロード数を増やす必要があります。eスポーツを通してモンストの魅力を伝えるのは、多様なユーザーのすそ野を広げる有効的な手段の一つ。外国人も集まりやすいHUBはうってつけの場所となります。

ミクシィとHUBの相乗効果

ミクシィのスポーツ事業との相乗効果も期待できます。ミクシィはゲーム事業に依存する構造から脱却すべく、スポーツ関連会社の買収や出資を繰り返してきました。競輪のネット投票サービスのチャリ・ロトの全株式を2019年3月に取得。10月にはバスケットボール男子Bリーグ「千葉ジェッツふなばし」の運営会社を子会社化。サッカーJ1「FC東京」にも出資をしています。11月にはスポーツメディアを運営するネットドリーマーズの全株式も取得しました。

2020年12月にはスポーツ配信専門チャンネル「DAZN」と業務提携し、契約している視聴者だけでなく、インターネットカフェの「快活CLUB」やカラオケ「コート・ダジュール」など、全国の店舗や商業施設にミクシィが関連するスポーツ中継を開始しました。人の目に触れる機会を増やしています。

HUBもミクシィのスポーツコンテンツ配信先となり、ユーザーや観戦者を獲得する場が増えるのです。

外食企業はコロナの救済策として出資を受けるケースがほとんどでした。しかし、ミクシィのHUBへの出資は相乗効果が高く、今後の両社の成長に期待ができる内容となっています。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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2021/03/28

ミクシィは3月22日、英国風PUBを運営するHUB(ハブ)に総額約15.5億円を出資し、持分法適用会社にすると発表した。ミクシィはロイヤルホールディングスが保有しているハブの一部株式も譲受ける。

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