1910年に横浜で誕生した不二家<2211>と、1931年に神戸で生まれたモロゾフ<2217>。どちらも港町で産声を上げた老舗の洋菓子ブランドです。その業績がコロナ禍で明暗を分けました。不二家は第3四半期の売上高が4.5%の減少に留まり、5億円の営業利益が出た一方、モロゾフの売上は16.1%減と二桁の減少となりました。7億7,700万円の営業赤字を計上しています。
この差はどこに起因するものなのでしょうか? この記事では、2社の業績を比較し、差が出た要因を炙り出すものです。以下の情報が得られます。
・不二家、モロゾフの業績
・2社の洋菓子事業の比較
・モロゾフがコロナ禍で不振に陥った理由
純損失額が不二家の4倍に

まずは業績を見てみます。両社ともに純利益は出ませんでした。不二家が1億5,800万円、モロゾフが6億3,200万円の純損失を計上しています。不二家は店舗閉鎖や臨時休業などによる特別損失3億500万円を計上しており、その影響を大きく受けました。
モロゾフも同じく休業補償等による特別損失1億3,800万円を計上しているものの、特損額と比較して純損失額が不二家の4倍膨らんでいます。これは営業利益が出ていないためです。
■不二家第3四半期(1月-9月)業績(単位:百万円)
前期 | 今期 | 増減 | |
売上高 | 72,935 | 69,625 | -4.5% |
営業利益 | 161 | 503 | 212.4% |
純利益 | △109 | △158 | - |
■モロゾフ第3四半期(2月-10月)業績(単位:百万円)
前期 | 今期 | 増減 | |
売上高 | 18,756 | 15,744 | -16.1% |
営業利益 | 40 | △777 | - |
純利益 | △26 | △632 | - |
※各社決算短信より筆者作成
不二家とモロゾフの原価率は50%前半でほとんど差はありません。しかし原価コントロールについては、不二家の華麗な手さばきが冴えました。コロナ禍でも53.3%という小数点以下の数字も狂いなく抑えたのです。モロゾフは51.5%から、コロナ禍では2ポイント以上アップの53.6%となっています。
差が大きく開いたのは販管費。今期の不二家が46.0%、モロゾフは51.3%となりました。その差が5ポイント以上も開いたのです。
■不二家第3四半期原価・販管費(単位:百万円)
前期 | 今期 | |
売上高 | 72,935 | 69,625 |
原価 | 38,858 | 37,104 |
原価率 | 53.3% | 53.3% |
販管費 | 33,915 | 32,017 |
販管費率 | 46.5% | 46.0% |
■モロゾフ第3四半期原価・販管費(単位:百万円)
前期 | 今期 | |
売上高 | 18,756 | 15,744 |
原価 | 9,667 | 8,440 |
原価率 | 51.5% | 53.6% |
販管費 | 9,048 | 8,081 |
販管費率 | 48.2% | 51.3% |
コロナ禍で両社の差が出た要因は2つです。1つは不二家が売上の減少幅を僅少にとどめたこと。もう1つは徹底的に原価と販管費の抑制を行ったことです。