超老舗の紀文はなぜこのタイミングで上場するのか

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紀文食品・日の出オフィス(東京都港区海岸)

売上が頭打ちに?

「ちくわ」や「はんぺん」、コンビニの「おでん」でおなじみの紀文食品<2933>が、3月8日に上場承認を受け、4月13日に東証一部に新規上場します。紀文は1938年に誕生した超老舗企業。非連結子会社を含めて18社を従え、グループ全体の売上高は1,000億円を超えています。

紀文は倒産や投資ファンドに買収された過去はありません。健全な成長を遂げてきた歴史ある会社が、なぜこのタイミングで新規上場するのでしょうか?

そこには売上が頭打ちになってきた、のっぴきならない事情が潜んでいそうです。この記事では以下の情報が得られます。

・紀文の業績推移
・予想株価と吸収金額
・上場する理由

コンビニおでんも紀文の主力サービス

自己資本比率6.6%で早急なテコ入れが必要

紀文の事業は大きく3つに分かれています。主に水産練り製品の製造販売を行う「国内食品事業」、水産加工品を輸出入する「海外食品事業」、物流網を活用し、顧客と車両を共有して配送する「食品関連事業」です。

2021年3月期のセグメント別売上高(予想)は、国内食品事業が756億1,100万円。海外食品事業が139億5,200万円、食品関連事業が239億600万円となっています。紀文は国内への依存度が高く、食品関連事業を含めると87.7%を占めています。

■紀文食品のセグメント別業績内訳(単位:百万円)

売上高 構成比
国内食品事業 75,611 66.6%
海外食品事業 13,952 12.3%
食品関連事業 23,906 21.1%

有価証券報告書より筆者作成

実は国内の水産加工品需要は、減少の一途を辿っています。水産庁の「水産物の流通・加工の動向」調査によると、水産食用加工品の生産量は2006年の200万トンから2016年の163万トンまで18%減少しました。それは練り製品も同じ。やはり10年で17%減少しています。

水産物の流通・加工の動向
水産庁「水産物の流通・加工の動向」より引用

国内消費が事業の柱となる紀文は、需要縮小の影響を真正面から受けています。

2020年3月期の売上が前期比1%減、今期が1.6%減となる予想です。紀文はコンビニにおでんを提供しており、2021年3月期は新型コロナの影響を受けています。しかし、その前から売上は頭打ちの状態です。

■紀文食品の売上推移(単位:百万円)

2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期(予想)
売上高 103,237 102,252 100,587
増減率 - 99.0% 98.4%

有価証券報告書より筆者作成

更に紀文は包括利益がマイナスの状態になっており、2019年3月期に17億2,800万円、2020年3月期に18億600万円を損失として計上しました。2020年3月期の純資産額は36億400万円。自己資本比率は9.6%から6.6%まで下がっています。2021年3月期第3四半期で自己資本比率は8.6%まで回復しているものの、まだまだ脆弱さが目立ちます。

同時期のマルハニチロ<1333>の自己資本比率が24.9%、日本水産<1332>が33.6%です。一般的に自己資本比率が9.0%を下回ると危険水準にあるといわれ、資本増強や黒字化に向けた組織改革が必要になります。紀文は2019年3月期の段階でその水準にまで近づいていたことになります。

このタイミングで上場する主要因は、即座に資本増強する必要に迫られており、赤字体質の早急な改善が急務だったこと。そして継続的な水産加工品市場の縮小で国内シェア拡大、および海外事業を伸長させるため、資金調達手段の多様化が必須だったためと考えられます。

今回の新規上場(IPO)によってどれだけの資金が調達できるのでしょうか。試算してみます。

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