通販や携帯事業のPR効果を考えれば「割安」か

仮にイニエスタ選手を「企業買収」したと考えると、J1の2チーム分以上の売上高に相当する価値があるということになる。ただ、フォーレストが年間1億円の経常利益を計上していたのに対して、アントラーズは同1億3800万円の営業赤字であることを考えれば、イニエスタ選手の価値はそれ以上ということになる。

裏を返せばイニエスタ選手によって年間128億円の売上増が見込めれば、一般企業の買収判断で「買い」といえる。名門アントラーズですら年間売上高が50億円を超える程度となれば、ヴィッセルの売上増ぐらいでは到底ペイしない。なので楽天の主力事業であるネット通販でのPR効果による売上増などで、「買収資金」を回収することになるだろう。

事実、楽天は移籍会見翌日の2018年5月25日に、通販サイトの楽天市場で「ようこそイニエスタ 感動をありがとう!全ショップ対象エントリーでポイント2倍」キャンペーンをスタート。イエニスタ選手の名前を冠したワインや彼の新ユニフォームなどを販売している。さらに2019年10月にサービスを始める、自前回線での携帯電話(キヤリア)事業のPRにも積極的に活用するはずだ。

ようこそイニエスタキャンペーン
早くもイニエスタ選手を使った販促キャンペーンが(楽天市場ウェブサイトより)

楽天の2017年1~12月国内電子商取引(EC)流通総額は3兆3912億円であり、イエニスタ選手のPR効果で0.37%の増収効果があれば128億円を超える売上増につながる計算だ。そうなれば「企業買収」としてのイニエスタ選手の移籍は、エディオンによるフォーレスト買収と同等の評価になる。つまり企業買収としてみれば、32億5000万円の年棒は「決して割高ではない」ということになるだろう。

ちなみにエディオンはヴィッセルと同じJ1に所属するサンフレッチェ広島の筆頭株主であり、買収したフォーレストが楽天と同じネット通販会社なのは単なる偶然である。

文:M&A Online編集部