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【M&Aを成功に導く法務・知財の勘どころ5】シャープVSテスラの係争などから見るM&Aへの影響と対策

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知財係争はM&A取引に大きな影響を与える…(写真はイメージです)

潜在的係争リスクにどう対処するか

更に厄介なのは、見えていない潜在的係争リスクである。製品・サービスが他社の知財権を侵害していないかの見極めは非常に難しい。DDにて、対象企業にこれまでの特許調査結果を提出するよう求めるが、知財部門がしっかりしている企業でなければ、非侵害調査まではしていないし、そもそも全く対応していない企業も見かける。この場合に、見えていないリスクに対して、どのようにリスクの分担をするのか、交渉もスムーズにはいかない。

DD期間は通常2~4週間と短く、非侵害調査となれば何か月もかかるし、費用もかかる。表明保証に規定するとしても、通常の補償期間は半年~1年である。係争がそのような短期間に判明することは少なく、表明保証違反に基づく補償請求ができる可能性は低い。

見えていない場合の知財係争リスクは、ある程度、買手企業が負担することになってしまう。しかし、リスクを少しでも減らす手立ては講じるべきである。全体的な侵害調査は時間的に難しいとしても、少なくとも競合企業の保有している知財は確認した方がよい。

買手企業の方に対応できる知財部があれば、期間が短いので簡易になってしまうが確認は可能であるかもしれない。自社で対応できない場合は、交渉の上、売手の費用負担で、弁理士に調査を依頼した方がよい。特に、係争の多い業界の場合は、見えていなくて進むのは差し止めや高額の賠償金を考えるとリスクが高過ぎる。DDは知財に限らず、限られた時間内で、どの程度、見える範囲を広げるかが肝である。見えてきた事実により、期待と懸念の検証を行っていくのである。

M&A後の知財使用に手当てを怠るな

この他に、対象企業の親会社が事業会社である場合、知財の切り分けの問題も生じる。対象企業が事業に必要な知財を全て保有しているとは限らない。親会社がグループ会社の全ての知財の権利を持ち、一元管理している場合もあるし、対象企業の事業以外の事業にも共通で使っている知財もある。対象企業が必要な知財を対象企業に移管(保有)させているかを確認する必要があるし、他の事業で共通で使っている知財があり、移管できない場合は、M&A取引後も引き続き使用できること、他社に売却しないこと等を契約に盛込むことが必要である。この手当てを怠ると、係争に巻き込まれることになりかねない。

法務・知財部門とDDや契約交渉にて連携することで、多額の支払いや事業を止めることになるリスクを回避し、ディールの確度を上げることができる。

文:MAVIS PARTNERS  アソシエイト  竹森 久美子

M&A Online編集部

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