本シリーズでは、M&Aの主幹部門が、ディールの効率・確度を上げるために、法務・知財部門とどのように協力すればよいのかをわかりやすく解説していく。

グーグル、独占禁止法違反で提訴

10月20日、グーグルがインターネット検索市場やオンライン広告市場の独占を維持するために反トラスト法(独占禁止法)に違反したとして、米司法省及びテキサス州、フロリダ州等の11州により連邦地裁にて提訴された。グーグルは、欧州委員会と競争法(独占禁止法)違反をめぐって裁判で争っているが、これまでの米国当局のIT大手企業への規制は緩かったため、マイクロソフト以来約20年ぶりとなることから注目を集めている。

違反するとされた内容としては、グーグルが検索サービスを広げるために、自社の検索サービスを初期搭載させ、他社の検索サービスの初期搭載を禁止する独占契約を端末メーカーと締結などしていることが指摘されている。当局は、独占契約が米国における携帯端末の検索クエリーの80%以上をカバーしているなど、インターネット及びオンライン広告市場における競争を阻害していると指摘している。

独占禁止法を管轄している司法省及び米連邦取引委員会(FTC)は、フェイスブック、アマゾン等のGAFAと呼ばれる他の米IT大手企業への独占禁止法調査も行っており、提訴が続く可能性がある。トランプ大統領は政権寄りの情報をIT大手企業が検閲していると批判しており、大統領選挙でのアピールの意味合いもあるとみられている。

M&Aにおける独占禁止法の影響

M&Aの世界で見ると、独占禁止法は、買収企業と対象企業の売上額や資産の額が基準以上であると企業結合規制に基づく届出を行い、当局の審査を受けることになる。

直近、グーグルは、フィットネスウェアラブル事業のFitbit社を約21億ドルで買収すると2019年11月に発表したものの、未だ米国や欧州当局等での承認を得られておらず、クロージングできないでいる。当局はFitbitのウェアラブルデータを広告目的に利用するのではないか、またデジタルヘルス分野での競争を阻害するのではないかと懸念している。

過去のグーグルの最大のM&Aは2012年のモトローラ・モビリティを約125億ドルで買収した案件である。この時も独占禁止法の審査を受け、承認を得るまで半年かかっている。

この時に問題とされたのは、グーグルはAndroid OS を提供しており、モトローラ・モビリティの買収により携帯端末を製造できることになるが、他の端末メーカーにOSを使用させないこととした場合、他のOSに変更するのは、スイッチングコスト、すなわち、開発のために時間とコストを要して容易ではないことが指摘された。

この審査時点で、Android OSは、当時、世界中で約1億5,000万台の携帯に搭載され、Android携帯の製造業者は39社に上り、スマートフォン市場で最大のシェアを有していた。

また、更にモトローラ・モビリティは、当時、約1万7,000件にも及ぶ特許および約6,800件の出願中特許を保有しており、取得する特許の中には、数百件の通信規格に関する必須特許(Standard essential patent)が含まれていて、これらが使用できなくなると、携帯端末市場において、多大な競争制限効果を有するため問題視されていた。

欧州委員会、米国、カナダ、中国、イスラエル、ロシア、台湾およびトルコにおいては独禁法審査が行われ、最終的には承認された。欧州委員会では、Googleのオープンソースポリシーとするビジネスモデルから、モトローラの端末のみに使用を制限する可能性が低いため問題がないとし、必須特許について、FRAND (Fair reasonable and non-discriminatory、非差別的、公正かつ合理的)条件でのライセンスを行うことを条件として承認した。