2019年度の日本企業によるM&A件数は8年連続の増加となり、4088件と前年度を6.2%上回り、過去最多を記録した(レコフ社「2019年のM&A回顧」より)。M&Aは日本企業にとって、もはや特殊なものではなく、案件数が増加するにつれM&A案件に携わることになる担当者数も増えていると思われ、その対応方法について関心がますます高まっていることであろう。

法務・知財と言えば、専門性が高いため、とっつきにくい部署と思われがちであるが、本シリーズでは、M&Aの主幹部門が、これら部門とディールの効率・確度を上げるために、どのように協力すればよいのかをわかりやすく解説していく。

法務・知財部門のアサインは早めに行え

法務、知財部門は、契約対応やリスク確認を主眼にプロジェクトにアサイン(任命)されることが多いと思うが、こういったことに加え、「ビジネス観点」でも協力することができる。また、これら部門が関わるタスクはスケジュールに影響を与えるほど重要になってくることがあるので、早めにアサインした方がよい。

M&Aプロジェクトにおいては、様々な部門が横串となるようにアサインされることになるが、キックオフ時は企画チームまわりで始まり、徐々にアサインされる部署が増えていくパターンがよくあるのではないか。法務部門は契約の作成を考える段階、知財部門に至っては基本合意が行われ、本格的にDD(デューデリジェンス、資産査定)が始まる段階でアサインする企業が多いようである。

しかし、これら部門に契約作成やリスク確認のための協力しか仰がないのではもったいない。

それに、そもそも、これら部門での確認事項は影響度が大きく、go or no-go、プロジェクトの継続か中止かの判断に関わる可能性もあるため、早いうちにアサインして検討した方がよい。

対象企業の事業計画の確度が高まる

まず、法務まわりについては、ビジネス観点から述べると、対象企業に契約書を開示してもらい、契約DDを行うことになるが、どのような商流となっているのか読み解くことによりビジネスの評価をすることができる。更に取引条件を確認することにより、対象企業の事業計画の確度も高められる。

また、ディールへの影響の点から述べると、新規事業領域や海外に関わる案件の場合には、どのような規制があるかの確認や許認可が必要な場合の取得のタイミング等を検討していないとディールのスケジュールが変わってくるため、最初に検討すべき事項である。一方、同業の買収であったとしても、今度は独占禁止法上の届出が必要となってくる可能性があり、これもまたスケジュールに影響を及ぼしてくるため、ディールの初期からの検討が必要になってくる。