2020年5月28日に施行された「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案」(「改正外為法」)及び関連改正政省令・告示が、2020年6月7日に全面適用となりました。今般の改正点のうち、M&A実務との関係で特に重要なポイントは、①事前届出の対象の見直し、及び②取得時事前届出免除制度の導入の2点です。

まず、①について、改正外為法では、上場会社の株式・議決権の取得時事前届出の閾値が10%から1%に引き下げられるとともに、(A)外国投資家自ら又はその密接関係者の役員就任の議案及び(B)指定業種に属する事業の譲渡・廃止の議案に賛成の議決権を行使する行為も、新たに事前届出の対象に追加されました。

一方で、改正外為法は同時に②取得時事前届出免除制度を導入し、一定の基準の遵守を前提に株式取得時の事前届出を免除することで、審査に付される取引の数を絞り込むこととしています。一般の外国投資家の場合、取得時事前届出免除制度を利用する際には、(i)外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しないこと、(ii)指定業種に属する事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないこと、及び(iii)指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと、の3つの基準を遵守する必要があります。

もっとも、指定業種のうち、武器や航空機、原子力関連の製造業、電力業及び通信業等、国の安全等を損なうおそれが大きい特定業種は「コア業種」に指定され、投資先の会社がコア業種に属する事業を営んでいる場合には、投資先が非上場会社であれば取得時事前届出免除制度を利用できず、投資先が上場会社であれば、一般の外国投資家は、上記(i)から(iii)に加えて、(iv)コア業種に属する事業に関し、取締役会又は重要な意思決定権限を有する委員会に自ら参加しないこと、及び(v)コア業種に属する事業に関し、取締役会等に期限を付して回答・行動を求めて書面で提案を行わないこと、の2つの上乗せ基準も遵守しない限り、取得時事前届出免除制度を利用できません。

上記のとおり、コア業種への投資か否かは、多くの外国投資家にとって、取得時事前届出免除制度の利用の可否に影響を与えるものですが、財務省は、新型コロナウイルス感染症の蔓延を踏まえて、2020年6月15日、感染症に対する医薬品に係る製造業及び高度管理医療機器に係る製造業をコア業種に追加しました。これらのヘルスケア分野のコア業種への追加は、2020年7月15日以降に行う対内直接投資等から適用となります。

外国投資家が当事者となるヘルスケアM&Aにおいては、取得時事前届出免除制度を利用できるか否かについて、特に慎重な検討を行う必要があるといえます。

パートナー 大石 篤史
アソシエイト 芝村 佳奈

森・濱田松本事務所 Client Alert 2020年7月号 vol.79より転載