ファミリーガバナンス(家族内統治)の仕組みを導入する創業家一族が増えています。近時のファミリーガバナンスは、家訓等を抽象的に定めるというよりは、創業家一族内のルールを法的に規律しようとするものが中心となっており、自社株その他の財産を、信託を活用して一つの器に集約するケースも無数に存在します。

 一般的には、親族内承継の場面で導入されている例が多いと言えますが、事業承継型M&Aの場面においても、創業家一族がファミリーガバナンスを活用し、以下のようなニーズを満たそうとする動きがあります。
①創業家一族が受け取った売却代金をまとめてプールし、より有利な条件で資産の運用・投資を行う(金融面)
②会社売却後も、創業家一族内の円滑な人的関係を維持し、レピュテーションを保つ(非金融面)
③分散している創業家一族の株式を一つに束ねることにより、買主と折衝するための窓口を一つに集約する(M&Aの側面)

 ファミリーガバナンスは、M&Aに反対する創業家メンバーを説得する材料にもなりえます。M&Aの買主が、売主である創業家一族に対して、あえてファミリーガバナンスを提案し、ディール成立の確度を上げることも考えられるところです。

パートナー 大石 篤史

森・濱田松本事務所 Client Alert 2020年9月号 vol.81より転載