トヨタ自動車<7203>とソフトバンク<9434>の提携に象徴される日本のMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス=サービスとしての移動性)に広がりが出始めてきた。

PKSHA Technology<3993>が2019年6月19日に駐車場機器の製造や駐車場運営などを手がけているアイドラ(東京都新宿区)を完全子会社化し、Maas分野での取り組みを強化することを決めた。

その後も日本のMaaSの可能性を調査したレポートの発行や、MaaS事業の実現可能性をテーマにしたセミナー、タクシー相乗りマッチングアプリの実証実験などの発表が続いている。日本のMaaSとはどのようなものなのか。

国土交通省がMaaSを後押し

MaaSは最適な移動手段の検索や予約などを提供するサービスで、自動車メーカーの立場だと、自動車という製品を販売するのではなく、自動車による移動サービスを提供する事業となる。オンライン配車サービスやカーシェアリングなどが代表例だ。

注目を集めているトヨタ自動車とソフトバンクが設立した新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)は、2020年代半ばまでにトヨタ自動車のモビリティサービス専用次世代電気自動車「e-Palette(イーパレット)」を用いて、移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどのサービスを始める。将来はグローバル市場も視野に入れて事業を展開するという。

また、国土交通省はMaaSの推進に積極的で、2019年6月18日に事業の熟度が高く、全国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う先行モデル事業として19事業を選定、実証実験の支援に乗り出した。こうした動きを受け、MaaSのすそ野が広がってきた。

PKSHA Technologyは駐車場機器メーカーのアイドラを7月5日に完全子会社化する。同社は2012年にアルゴリズム(問題を解くための手順を定式化したもの)の研究を行う技術者や研究者らが創業した企業で、機械学習や深層学習技術を用いたソフトや機器の知能化の開発やソフトウエアの販売を行っている。2018年9月期の売上高は15億300万円。

アイドラは2012年の設立で、駐車場機器の製造や駐車場運営受託を通じて、全国に10万台以上のIoT(モノのインターネット)機器を配置し、駐車場の空き情報などのデータを管理してきた。2018年7月期の売上高は44億5800万円。

アイドラのこうした事業がMaaSで必要となってくる自宅から最寄りのバス停や駅までの、いわゆるラストワンマイル問題を解決する手段として有力であるとともに、PKSHA Technologyは「アルゴリズムと組み合わせることで多様な収益モデルの展開が可能」と判断、M&Aに踏み切った。

MaaSは、これまで自動車会社や鉄道会社などの大手による取り組みがほとんどだったが、こうした企業以外の動きも目立ってきた。

相乗りタクシーの実験やセミナー、レポートも

リアルタイム位置情報を活用したサービスを手がけるNearMe(東京都千代田区)は2019年7月から長岡市ハイヤー協会、長岡市と共同で、長岡市内でタクシー相乗りマッチングアプリ「nearMe.」(ニアミー)の実証実験を始める。MaaS活用の一つとして、市民にタクシーの新しい乗り方を提案するのが狙いだ。

新社会システム総合研究所(東京都港区)は8月に「自動運転・MaaS事業の実現可能性」をテーマにセミナーを開催する。「新モビリティ事業の実現可能性を評価できる指標」を示すという。

デロイトトーマツグループ(東京都千代田区)は、日本におけるMaaSの将来像と可能性を分析したレポートを発行した。地方と都心それぞれの問題点を洗い出し、事業の目指すべき方向性を示した。

大手企業や国土交通省などの積極的な動きに伴って、今後幅広い業界でMaaSを巡る動きが活発化しそうだ。

国土交通省が選定した「新モビリティサービス推進事業」の19の先行モデル事業(国土交通省のリリースより)

文:M&A online編集部