「世界中から観客が押し寄せるオリンピックで、世界共通の飲み物であるワインの消費が拡大するという現象が見られます。日本でも東京オリンピックを機にワインブームを起こすべきです」 

こう主張するのは「世界のビジネスエリートが身につける教養としてのワイン」などの著書がある渡辺順子さん。 

2020年に本当に日本でワインブームは起こるのか。渡辺さんに過去の事例や日本のワイン生産状況などについて聞いた。

ブラジルではワイン生産量が急増

-オリンピックとワインブームについて過去の事例を教えて下さい。

2016年のブラジルのリオデジャネイロで開催されたリオオリンピックで、ブラジルのワイン生産が大きく伸びました。ブームは今でも続いており、ブラジル産のスパークリングワインの輸出量は2018年は前年度より47%増え9万4000リットルほどになりました。金額は63%増え45万8000ドルほどに達しています。2018年のワインの輸出量は前年度より48%多い約45万9000リットルで、金額は37%アップの約100万ドルになっています。

増加の理由はブラジルを訪れた世界中の人たちがオリンピック期間中にブラジルワインを味わい、帰国後もブラジルワインを購入しているためです。ブラジルワインはそれまであまり有名ではありませんでしたが、オリンピックを機に一気に生産量が増大しました。

米国のオラクル社はこうした状況を予想していたのか、2009年にブラジルにワインの輸出入を手がける販売会社を設立し、ブラジルでのワイン事業に乗り出しています。 

-他のオリンピックでも同じような現象が見られますか。

内容は違いますが、2008年の北京オリンピックでもワインブームが起こっています。中国ではワイン生産が拡大したのではなく、中国の人たちがワインを多く飲むようになりました。その結果2008年産のワインの中国への輸入が大幅に増えました。2008という数字が中国の人たちにとって、いい数字だったのと、2008年の北京オリンピックの記念というのが理由のようです。

また2008年は香港でワイン関税がゼロになったのも、中国でのワイン輸入の拡大に大きく貢献しました。2008年はリーマンショックの影響で米国でのワイン消費が落ち込んだため、中国の輸入拡大はワイン業界にとっては大変ありがたいものになりました。

-そこで日本でも同じようにワインブームが起こると考えられているわけですね。

渡辺順子さん

日本でワインブームが起こるかどうか分かりませんが、ブームを起こさせるべきだと考えています。2020年の東京オリンピックは海外から多くの人たちが来日します。日本のワインは海外ではあまり飲むことができませんので、せっかく日本に来たのだから日本のワインを飲もうとします。ワイン業界にとっては消費を拡大する絶好のチャンスです。 

ただ日本の場合はブラジルのようにはいかないと思われます。山梨などのブドウ畑に行きますと道路を挟んで栽培しているブドウの品種が違うことがあります。欧米ではこういうことはありません。一つの地域では同じ品種を栽培しています。狭い地域でいろんな品種を栽培していると大量生産ができないため、日本はワインを本格的に作っていないと思われます。日本はテロワール(生育環境)を意識したワインを作っていないと思われます。 

また日本の気候風土はワイン生産にあまり向いていないように思います。梅雨の時期にブドウに雨が当たる品質が落ちます。このため日本では雨が当たらないようにブドウの房に傘をかけます。夏の強い日差しもブドウにはよくありませんので、やはりカバーをかけます。この作業は大変ですので、大量生産には向きません。