2019年6月25日、三菱重工業<7011>がカナダの航空機製造大手ボンバルディアから小型旅客機「CRJ」(50ー100席)事業を5億5000万ドル(約590億円)買収することで合意した。すでにボンバルディアはCRJ以外の旅客機事業を欧エアバスなどに売却しており、旅客機事業から撤退することになる。

ヒットか退場かー旅客機ビジネスは「博打」

ボンバルディアは、ブラジルのエンブラエルと並ぶ世界小型旅客機業界の2強。ライバルのエンブラエルも2019年2月に、小型旅客機事業の米航空機製造大手ボーイングへの売却を決めた。相次ぐ事業撤退に「小型旅客機市場は、そんなに不振なのか?」と思われるかもしれない。

ところがそうではない。両社の主力製品で、三菱が「スペースジェット(旧MRJ)」で参入を目指す50-100席程度の小型ジェット旅客機は「リージョナルジェット」と呼ばれ、航続距離1000-4000キロメートルと短・中距離の地域間輸送での運用を想定している。2000メートル未満の短い滑走路でも離着陸でき、当初は空港整備が遅れている新興国や発展途上国向けの航空機として構想された。

それが一変したのは、格安航空会社(LCC)の登場だ。LCCはサービスを簡易化することで航空運賃の価格破壊を実現し、急成長した。LCCは近・中距離路線の運航が主力で、リージョナルジェットの需要が拡大する。リージョナルジェットは今後20年で代替を含めて5137機分の需要が見込まれる成長市場なのだ。

「ジェットスター」などLCCの台頭で小型旅客機市場は拡大を続けている(Photo by lasta29)

しかも、世界航空機産業の頂点に立つボーイング、エアバスの2社が参入していない市場だ。なのになぜ、小型旅客機製造のトップ2社が同市場から撤退するのか。その背景には航空機ビジネス全体に共通する「問題」がある。

一言でいえば、航空機ビジネスは「博打」(ばくち)なのだ。航空機開発には膨大な開発費が必要となる。新機種が売れなければ経営は行き詰まる。自動車などのように「ヒットしなければ次のモデル」というわけにはいかない。「絶対に新製品で失敗できない」ビジネスといえる。