NEXT STORY
海外M&Aに潜む贈賄のリスクとは?しっかり学ぶM&A基礎講座(73)
海外子会社で贈賄事件が発生すると、刑事上の責任はもとより、信用失墜や風評被害などを含め、本部への影響も多大なものとなる可能性があります。今回はこうした海外子会社における贈賄リスクについて概説したいと思います。
「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト<7421>が、競合のはま寿司(港区)から不正競争防止法にまつわる告訴がなされ、6月28日に関係当局による捜査が行われたと適時開示を行いました。カッパ・クリエイトの代表取締役社長である田辺公己氏が、2020年11月から12月にかけて日次売上データを元同僚から個人的に入手していたというもの。田辺氏は2014年にはま寿司の取締役を務めた後、2020年にカッパ・クリエイトの顧問に就任していました。
なぜカッパ・クリエイトは、はま寿司の日次データがそれほどまでに必要だったのでしょうか?
また、入手したデータが2020年11月・12月というタイミングだったのは、どうしてでしょうか?
この記事では、カッパ・クリエイトの業績を見ながらその理由を推測するものです。
・回転ずし各社(カッパ・クリエイト、スシロー、くら寿司)の業績
・かっぱ寿司が仕掛けた「食べ放題」の行方
・売上データが必要だった理由
はま寿司は全国で500店舗以上展開しています。店舗数は国内トップのスシローやくら寿司と肩を並べています。すき家を運営するゼンショーホールディングス<7550>が、2002年回転寿司事業を立ち上げるために子会社のはま寿司を設立しました。
渦中の人となった田辺公己氏は、1998年に東海大学開発工学部を卒業後、ゼンショーに入社しました。2009年に経営改革室ゼネラルマネジャー、2014年にはま寿司の取締役に就任しています。その後、オリーブの丘社長執行役員、2017年にジョリーパスタ代表取締役社長、2018年にココスジャパン代表取締役社長を務めました。グループの中で順調に出世を重ねてきた実力派と言えます。
2020年にゼンショーを飛び出して、はま寿司の競合となるカッパ・クリエイトの顧問に就任しました。その年の12月に執行役員副社長、2021年2月には代表取締役社長に就任しています。
多くのメディアでカッパ・クリエイトの業績低迷が取り沙汰されています。確かに、2014年12月にコロワイドに買収されてからも、業績が急回復することはありませんでした。2017年3月期には5億2,400万円の営業損失(前年同期は25億4,900万円の黒字)となり、58億円の純損失(前年同期は52億8,100万円の黒字)を計上しています。
しかし、カッパ・クリエイトはこのどん底期を抜けて業績は回復傾向にありました。不採算店を退店し、利益が出る体質になっていたのです。
新型コロナウイルス感染拡大が鮮明になる前の2020年3月期の売上高は前年同期比1.8%減だったものの、営業利益は同68.0%増の10億5,700万円となりました。1%を割り込んでいた営業利益率は1.4%まで回復しています。
■回転ずし各社(かっぱ寿司、スシロー、くら寿司)の業績推移
※スシローはFOOD&LIFE COMPANIESに社名変更しました。
スシローのようにコロナ禍でも増収増益となるほどの成長力はないものの、じわじわと力をつけていたのです。カッパ・クリエイトは重視する経営指標を売上高から利益へと移していました。
他社と比較すると営業利益率はまだ低く、薄氷を踏むような経営管理が求められていました。そんな中、集客施策として期待をかけていたのが回転ずし業界を震撼させた「食べ放題」企画でした。
しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。
海外子会社で贈賄事件が発生すると、刑事上の責任はもとより、信用失墜や風評被害などを含め、本部への影響も多大なものとなる可能性があります。今回はこうした海外子会社における贈賄リスクについて概説したいと思います。