なぜ「かっぱ寿司」は「はま寿司」の日次売上データが必要だったのか?

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2021年2月に田辺公己氏がカッパ・クリエイトの代表取締役社長に就任していた

食べ放題の集客効果は

かっぱ寿司は2017年6月13日から7月14日までの1か月間、食べ放題企画を投入します。初めは21店舗での試験導入でした。

男性1,580円、女性1,380円の「食べホー」企画は、多くのメディアで取り上げられて話題となり、同じ年の8月28日からは36店舗、2017年11月1日からは全店での実施となりました。

36店舗から350店舗へと一気に拡大したのです。全店での実施は再度メディアを賑わせましたが、劇的な集客効果があったかと言えば疑問が残ります。

というのも、既存店舗2017年11月の客数に注目してください。前年比94.8%という結果になっています。10月と比較すれば10ポイント以上伸びていますが、前年比100%を上回るほどのインパクトはありません。

■かっぱ寿司 2017年度 月次売上高

かっぱ寿司2017年度売上報告
カッパ・クリエイト 投資家情報「売上報告2017年度」より抜粋

かっぱ寿司は食べ放題でどれだけ集客効果があるのか、正確に見極めることが困難だったと考えられます。

その後、複数の食べ放題メニューを用意したり、アイドルタイム(14時~17時)からランチ・ディナーへと拡充したりと、試行錯誤を繰り返しながら食べ放題企画を継続していました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大で飲食店が自粛を強いられ、2020年10月末でサービスを一時休止することとなったのです。

売上データが欲しかった理由

ここで、田辺公己氏がはま寿司の売上データを入手していたとされる時期が気にかかります。報道等では、11月から12月とされていましたので、かっぱ寿司が食べ放題企画を中止したタイミングと重なります。

チェーン系の飲食店はどの会社も、店舗ごとの売上や客数、客単価、昨年との比較データを経営陣や管理職、店長などと日次で共有しています。しかし、数字が並んだだけのそのデータをたとえ競合の経営者や社員が漠然と眺めたとしても、それほど経営や意思決定に寄与する内容とはなりません。

ところが、コロナ禍という特殊な状況下で食べ放題のキラーコンテンツを一時中断したタイミングであれば、データの見え方はがらりと変わります。奇しくも2020年11月はGo To Eatキャンペーンがちょうど終了した時期でもありました。

すなわち、食べ放題や国を挙げてのキャンペーンの影響がなく、純粋な店舗の集客力を競合店と比較して測ることができたと考えられます。

戦略的に進めてきた退店の意思決定に売上データが寄与したかもしれません。しかも、田辺氏は2021年2月にはカッパ・クリエイトの社長に就任することが決まっており、何としても成果を出したかったはずです。

はま寿司がカッパ・クリエイトを告訴した今回のケースは、回転ずし業界が熾烈な過当競争にさらされていることを如実に示すものだと言えます。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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