1兆円近くを投じた三菱の小型旅客機ビジネス

ボンバルディアは「Cシリーズ」(100-130座席)の開発遅れと受注の伸び悩みで経営不振に陥り、同シリーズの事業をエアバスに売却。CRJも三菱に売却し、航空機市場から撤退することになった。エンブラエルも1990年、3億ドルをかけた「CBA123」の開発中止で経営危機に陥った経験がある。ボーイングへの事業売却も、旅客機ビジネスが抱える経営リスクを回避するためだ。

大型旅客機メーカーも例外ではない。米ロッキード(現・ロッキード・マーティン)は「L-1011 トライスター」(234ー263席)が、米マクダネル・ダグラスの「DC-10」(250ー380 席)との販売競争に敗れ、1981年に民間航空機事業から撤退する。

ロッキードを撤退に追い込んだマクダネル・ダグラスも、「MD-11」(204ー410席)が同クラスのボーイング「767」「777」や、エアバス「A300-600R」「A330」との販売競争に敗れ、1996年に130億ドルの株式交換でボーイングに買収された。

航空機産業の「巨人」であるボーイングやエアバスでさえ、「777」や「A380」など大型機の販売不振で業績低迷を余儀なくされている。主力機が失敗すれば経営危機に陥りかねないのは、すべての航空機メーカーに共通のリスクなのだ。大型旅客機メーカーよりも経営基盤の弱い小型旅客機メーカーが「身売りによる事業撤退」を考えるのも当然だろう。

巨大航空機メーカーでも新型機が不発に終われば大打撃を受ける-販売不振で生産中止が決まった「A380」(Photo by lasta29)

三菱も「スペースジェット」に7000億円もの開発費を投じており、新たに開発に乗り出した70席級にも1000億円の費用が追加で必要となる。さらにボンバルディア買収の590億円が上乗せされ、小型旅客機への投資は1兆円の大台に迫る勢いだ。

一方で新規受注は2016年を最後に途絶えており、受注は仮契約を含めて407機のまま。三菱は2020年半ばに先行開発した90席級の初納入を目指しているが、それが実現してもヒットしなければ同社の航空機ビジネスは間違いなく行き詰まる。三菱は1兆円近くをかけた「大博打」に勝てるのだろうか。

文:M&A online編集部