家電量販店大手が住宅、生活や金融など他業界との連携にアクセルを踏み込んでいる。少子高齢化や人口減などに伴い市場が縮小に向かう中、「脱家電」「非家電」をキーワードに新業態の店舗像を模索する動きが加速しているのだ。

ノジマ「スルガ銀」株を約5%取得、フィンテックに照準

ノジマは5月に入り、スルガ銀行とクレジットカードやフィンテック事業の共同展開などに関する業務提携で基本合意した。スルガ銀行はシェアハウスなど投資用不動産を巡る不正融資問題で経営の屋台骨が揺らいでいるが、その支援企業として新生銀行とともに名乗りを上げた。

スルガ銀行の都内の支店

ノジマは全175店舗(3月末)のうち、同社発祥の神奈川県に約50店舗、静岡県に17店舗を持ち、スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を置き、神奈川県にも約40店舗を展開し、営業エリアが重なる。両社店舗での商品・サービスの相互販売(クロスセル)も進め、スルガ銀行の顧客がノジマで家電を購入する際の割引などを計画する。

同社は5月初めの決算発表で、スルガ銀行株式の4.98%を保有していることを明らかにした。上場企業の株式を5%以上取得した場合、大量保有報告書の提出が義務づけられているが、この一歩手前まで水面下で買い進めていたことになる。業務提携の効果を見極め、追加取得も検討するという。

スルガ銀行に触手を伸ばす理由は何か。ITと金融を融合したフィンテック事業の取り込みにほかならない。スマートフォンの普及やAI(人工知能)の進化に伴い、金融機関以外のプレーヤーが参入し、スマホ決済に代表される新たな金融サービスを提供する動きが急速に広がっている。

ノジマは2015年に携帯販売大手のアイ・ティー・エックス(ITX)を約850億円で、続いて17年にインターネット事業のニフティを約250億円で買収。あらゆる家電製品がインターネットを通じてつながるIoT(モノのインターネット)時代を見据え、大型M&Aを連発した。その延長線上で今回、フィンテック対応のスタンスが明確になったといえる。

石井スポーツを買収したヨドバシ

Mt.石井スポーツ(神田本店)

アウトドア用品のICI石井スポーツ(東京都新宿区)を4月末に買収したのは、「ヨドバシカメラ」を運営するヨドバシホールディングス。投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)が保有する全株式を取得した。石井スポーツは1964年に創業し、関東を中心に全国に30店舗。ヨドバシ店舗への出店や通販サイト「ヨドバシ.com」の活用を進める。

ヨドバシは2018年末に酒類販売にも進出。現在、新宿西口本店をはじめ、横浜、川崎、秋葉原にある4店舗で取り扱う。

ヤマダ、住まいのトータル提案に軸足

大塚家具・新宿ショールーム

業界最大手のヤマダ電機は2月、大塚家具と業務提携した。ヤマダ電機はリフォームやインテリアなどの売場を拡充した新業態の「家電住まいる館」(3月末74店舗)を拡充中。4月には新築住宅の品質検査や建物の定期検査、リフォーム提案などを手がける家守りホールディングス(東京都千代田区)との資本・業務提携を発表した。

ヤマダ電機は2011年に注文住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を子会社化し、住関連分野に本格参入。家電を核とした住まいのトータル提案に経営の軸足を移してきた。2017年にはリフォーム専業大手のナカヤマ(埼玉県上尾市)を子会社化(翌年、本体に吸収合併)した。

家電量販店各社にとって家電との親和性が高い住関連は激戦区。エディオン、ビックカメラ、ケーズホールディングスも同様に「家まるごと」を旗印にリフォーム市場の開拓に力を入れており、勝ち残りに向けてM&Aの活発化も予想される。 

文:M&A online編集部