最近の上場廃止銘柄で話題性のあるものといえば、昭和シェル石油が思い当たります。出光興産との3年越しの経営統合が完全子会社化という形で結実し、発展的に上場廃止に至った例といえるでしょう。
上場廃止となる理由には様々なものがあります。今回は証券取引所における上場廃止基準や最近の廃止事由について概観してみたいと思います。
上場廃止基準は市場によって異なるものが定められています。例えば、東京証券取引所(一部・二部)、マザーズ、JASDAQなど、それぞれの市場に応じた上場廃止基準が設けられています。ここでは、東京証券取引所(一部・二部)の上場廃止基準のうち主要なものを紹介してみましょう。
まず、有価証券報告書などの提出遅延が挙げられます。有価証券報告書は投資家を保護するためのディスクロージャー制度において中核をなすものです。そのため、証券取引所においても提出遅延は大変重いものと受け止められていることの表れといえます。
近年では、東芝<6502>において、監査法人からの監査報告書が添付された有価証券報告書を期限内に提出できない可能性が取り沙汰されていましたが、そうした事態は回避されました。
また、有価証券報告書における虚偽記載や監査報告書における不適正意見も上場廃止基準となっています。具体的には、虚偽記載がある場合や監査報告書が不適正意見などの場合であって、かつ「直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難」と取引所が認めるときに上場廃止となる可能性があります。
債務超過も上場廃止基準の一つとなっています。上場企業が債務超過の状態となった場合においては、1年以内に債務超過の状態を脱しないと上場廃止となります。なお、債務超過の判定は、原則として、連結貸借対照表によります。
また、「株主数が400人未満になった場合」、「流通株式数が2,000単位未満になった場合」、「流通時価総額が5億円未満になった場合」、「流通株式比率が5%未満になった場合」、「時価総額が10億円となった場合」などにも上場廃止基準に抵触するおそれがあります。
経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。
学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)
出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など