ベンチャー企業投資、利益相反の可能性はらむ

ーベンチャー企業への投資や買収の交渉で、一般の事業会社が注意すべきところは。

そもそも、事業会社がベンチャー企業に投資するのは自社単体で得られないようなイノベーションの果実の獲得を期待してのこと。自社事業とのシナジー創出を目的としている以上、対象会社が目指す成長の方向性とは方針が異なり、対象会社や純投資家との間で利益相反となる可能性がある。

事業会社としてはビジネスのやり方に口を出すなど何かと縛ろうとしがちだが、要求を受け入れることは対象会社の事業を制約し、ひいては成長の妨げになりかねない。このため利害調整が交渉上の極めて重要テーマとなる。

付け加えれば、同じ事業会社でも伝統的大企業と比べて新興上場企業の場合、ベンチャー企業への投資態度がかなり異なる。自社もかつてベンチャー企業で、投資を受け入れてIPOにいたったという経緯があるため、シナジー獲得にこだわらず、純投資目的のみで出資することに違和感がない。

ビジネスモデルの分析もデューデリの重要テーマ

ーベンチャー企業の法務デューデリジェンスでは、そのビジネスモデル自体の分析が重要テーマとのことですが。

ベンチャー企業のビジネスモデルは革新的な内容を含むことが多く、そのリスクが未知数であるか、十分に検討されていない可能性があるからだ。特にB to Cのビジネスで問題になりやすいように思われる。必要な許認可の有無、知的財産権など他者の権利の侵害はないか…。不適法ではないにしても社会的に適切かどうかを含めて、慎重に分析する。問題のあるビジネスモデルを持つ会社を買収することは、買主のレピュテーション(評判)に大きな影響を与えかねない。

ー中小規模のM&Aで最近の傾向はありますか。

人材獲得をM&Aを通じて行うパターンだ。対象会社のキーパーソンの獲得や開発チームの一括採用を目的とするもので、これはアクハイアー(Acq-Hire)と呼ばれるM&Aの1形態。ベンチャー企業を対象によく見られる。

また、人手不足の業界ではM&Aのニーズが非常に高い。例えば建設業。作業要員を確保するために、売り案件があれば、孫会社やひ孫会社として取り込もうと意欲的だ。人材目的に限らず、買収動機はさまざま。それによってデュー・ディリの要点も変わってくる。