カーブアウトM&Aに思い入れ

ーところで、本書の売れ行きは。

幸い好評のようだ。早々に増刷となり、すでに第3刷まで決まった。正直、ここまで受けるとは思わなかった。SNSでもいろいろ意見が寄せられているが、読みやすいと言ってくれる。数多くの事例を用いたのが良かったのかもしれない。

ーこれまで、しびれるようなM&Aの思い出はありますか。

本書のテーマではないが、強いてあげれば、事業売却。会社分割事業譲渡の方法を用いて、売主のある事業を切り出す、いわゆるカーブアウトM&Aだ。ここでは特にスタンドアローン・イシューの処理が交渉上大きな問題となる。スタンドアローン・イシューとは買収によって、それまで対象事業が売主から享受していた有形無形のさまざまな便益が得られなくなることをいう。その代表的なものは特許など知的財産権の利用。

売主はスタンドアローン・イシューをできるだけ解消して対象事業の価値に悪影響を与えず売却する必要がある。しかし、それが売主にとっては自社の残る事業に一定の制約を課すことにもつながることから、激しい交渉が行われる。難しさと同時に、ある種のおもしろさがあり、M&Aの醍醐味だと思っている。

柴田 堅太郎さん(しばた・けんたろう)

1998年に慶応義塾大学法学部法律学科を卒業。安田火災海上保険(現損害保険ジャパン日本興亜)を経て、2001年に弁護士登録(第一東京弁護士会)、長谷川俊明法律事務所に入所。2006年ノースウエスタン大学法科大学院を卒業し、長島・大野・常松法律事務所に入所。2007年ニューヨーク州弁護士登録。2014年に独立し、柴田・鈴木・中田法律事務所を開設。

M&A、組織再編、ベンチャーファイナンス、企業の支配権獲得紛争などのコーポレート案件を中心に企業法務全般を取り扱う。

聞き手・文:M&A Online編集部 黒岡 博明