【M&A戦略】国や世界を巻き込んだ再編を推進

 JXTGの行った主なM&Aは下表の通りである。過去のM&Aを見てみると、JXTGホールディングスは、同業他社の買収や経営統合を繰り返してきたことが、あらためてわかる。

 大きな再編を取り上げるとすれば、①1999年の日本石油と三菱石油の合併、②2000年の東燃とゼネラル石油の合併、③2002年の新日鉱ホールディングスの誕生、④2010年のJXホールディングスの誕生、⑤2017年のJXTGホールディングスの誕生ということになる。

図表2:JXTGホールディングスの沿革と主なM&A

年月分類沿革と主なM&A
1888年5月 新日石内藤久寛、山口権三郎等により、新潟県刈羽郡石地に有限責任日本石油会社を創立
1894年1月 新日石日本石油に商号変更
1905年12月 新日鉱 久原房之助、赤沢銅山(後の日立鉱山、茨城県)を買収、操業開始
1912年9月 新日鉱 久原鉱業設立
1921年10月 新日石宝田石油を合併
1928年12月 新日鉱 日本産業に改称
1929年4月 新日鉱 日本産業の鉱山・製錬部門を分離・独立、日本鉱業設立
1931年2月 新日石三菱石油設立
1934年2月 新日石道路部門を分離、新たに日本鋪道(現NIPPOコーポレーション)を設立
1939年 東燃東亜燃料工業設立
1941年6月 新日石小倉石油を合併
1942年4月 新日石鉱業部門を帝国石油に譲渡
1942年6月 新日石愛国石油を合併
1947年 東燃財閥解体により、三井物産の燃料部が、ゼネラル物産(後のゼネラル石油)として独立
1949年4月 新日石元売業者に指定され販売業務再開(三菱石油も同時期に販売業務を再開)
1949年5月 新日石日本石油が東京、大阪、名古屋の各証券取引所に株式を上場
1952年1月 新日石三菱石油が東京証券取引所に株式を上場
1958年 東燃ゼネラル物産がゼネラル石油に商号変更
1961年 東燃モービル石油、エッソスタンダード石油設立。三井物産石油販売が三井物産100%子会社として設立
1963年 東燃モービル石油と三井石油の折半出資により石油精製専業会社の極東石油工業を設立
1982年 東燃エッソスタンダード石油がエッソ石油に商号変更
1988年11月 新日鉱 米国グールド社買収
1990年 東燃三井物産石油販売が三井石油に商号変更
1992年11月 新日鉱 日鉱金属が、日本鉱業から金属資源開発部門、金属事業部門及び金属加工事業部門を承継し、営業開始
1992年12月 新日鉱 日鉱共石が、日本鉱業と共同石油の合併により発足
1993年12月 新日鉱 日鉱共石が、ジャパンエナジーに改称。新社章及び石油事業分野における新ブランドネーム「JOMO」を使用開始
1996年4月 新日石Caltex Petroleum Corporationから日本石油精製の全株式を取得し、完全子会社化
1998年8月 新日鉱 日鉱金属が東京証券取引所市場第一部に株式上場
1999年4月 新日石日本石油と三菱石油が合併し、日石三菱に商号変更
1999年9月 新日石興亜石油の株式を公開買付けにより取得し、子会社化
1999年12月 新日鉱 ジャパンエナジーが鹿島石油の株式を取得し、子会社化
2000年 東燃東燃とゼネラル石油が合併し、東燃ゼネラル石油が誕生
2000年3月 新日石伊藤忠商事から日石伊藤忠の株式を取得し、子会社化
2001年10月 新日石興亜石油及び東北石油の全株式を株式交換の方法により取得し、完全子会社化
2002年6月 新日石日石三菱から新日本石油に商号変更
2002年9月 新日鉱 ジャパンエナジー及び日鉱金属は、株式移転方式により、共同持株会社 新日鉱ホールディングスを設立
2009年3月 新日石日本海石油株式会社の全株式を取得し、完全子会社化
2010年4月 JX JXホールディングス設立により、新日本石油及び新日鉱ホールディングスがJXホールディングスの完全子会社となる
2010年7月 JX 新日本石油がジャパンエナジー及び新日本石油精製を合併し、JX日鉱日石エネルギーに商号変更。新日本石油開発がジャパンエナジー石油開発を合併し、JX日鉱日石開発に商号変更。新日鉱ホールディングスが日鉱金属を合併し、JX日鉱日石金属に商号変更
2013年 東燃ダウ・ケミカルから株式を取得、NUCに社名変更し、100%子会社
2014年 東燃三井石油と極東石油工業は、東燃ゼネラル石油の子会社となる
2016年1月 JX JX日鉱日石エネルギーがJXエネルギーに商号変更。JX日鉱日石開発がJX石油開発に商号変更。JX日鉱日石金属がJX金属に商号変更
2017年4月 JX JXホールディングスと東燃ゼネラル石油との株式交換により、東燃ゼネラル石油がJXホールディングスの完全子会社となる。JXホールディングスがJXTGホールディングスに商号変更。JXエネルギーが東燃ゼネラル石油を合併し、JXTGエネルギーに商号変更

M&A Online編集部作成

 1つ目の日本石油と三菱石油の合併の際には、日石三菱は石油製品の販売シェアは全国ベースではトップの約25%、一部地域ではガソリンなどのシェアは30%を超え、国内最大の石油元売りとなった。

 こういったM&Aの際には、公正取引委員会による独占禁止法にかかる審査がおこなわれるが、本件は無条件に承認されていた。石油が国際市況商品であるため競争は制限されないということ、米国企業であるエクソンやモービルなども日本に拠点を持つということから承認された格好だ。この点から、国も石油業界の再編を後押ししていたことがわかる。

 2つ目の東燃とゼネラル石油の合併には、グローバルな動きも影響した。石油メジャーと呼ばれたエクソンとモービルの合併による世界的な再編である。

 合併により東燃ゼネラル石油が誕生することになるが、存続会社は規模の小さなゼネラル石油となった。背景には、販売会社として「ゼネラル」のブランドを残すことと、赤字会社の損失を次年度に繰り越すことができる法人税上のメリットを得るという判断があった。

 3つ目は、2002年にジャパンエナジーと日鉱金属が共同株式移転の手法により誕生した新日鉱ホールディングスである。ちなみに、いわゆる持ち株会社制度は1997年に解禁された制度で、これを早速取り入れた形になる。統合の背景には、業界全体の低迷があり、統合に伴う一部税負担を国から免除されており、国からも後押しを受けたことになる。

 4つ目は、JXホールディングス(JXの名称は、ジャパンの「J」と未知を示す「X」からきている)の誕生である。グループ売上高は9兆円にものぼり、国内最大グループとなる。ガソリンなど燃料油販売シェアは34%、系列ガソリンスタンド網は1万3000近くになったが、業界環境は厳しく、1999年をピークに減少の一途を辿っている状況であった。

 そんな業界環境の中、一番の課題は、巨額赤字に苦しんでいた石油精製販売事業の立て直しである。同事業の効率化と並行して、石油・金属分野において収益性の高い上流分野への投資を推進することを掲げて船出することとなった。この再編にも国が絡んでおり、資源エネルギー庁が音頭を取って、石油業界の設備過剰と過当競争を是正する目的があった。

 そして最後に、JXTGホールディングスの誕生である。この再編によって、出光興産、昭和シェル石油、コスモ石油と併せて4グループに再編が進んだこととなり、出光興産と昭和シェル石油の再編も済めば3グループへと集約され、業界再編はいったんの終焉を迎えるだろう。

 以上のようにポイントとなる再編を見ると、石油精製販売事業の採算悪化に伴い、国や世界を巻き込んだ再編が巻き起こりM&Aが利用されたことになる。