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【出光興産】創業家が反対する経営統合は、飛躍の起爆剤となりえるか

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出光興産の創業家は昭和シェル石油との経営統合にNo(ノー)を示す

 『海賊と呼ばれた男』の書籍や映画で話題になった出光興産<5019>。創業者は、主人公のモデルとされる出光佐三氏である。同社は創業以来、石油元売りとして戦前・戦後の時代の荒波を乗り越え、日本経済を牽引してきた。最近は昭和シェル石油との経営統合に出光興産の創業家が反対したことで、創業家の動向が注目を浴びている。

 出光興産というと石油元売りとしてのイメージが強いが、プラスチック樹脂等の機能材料の製造や石炭開発、アグリバイオ事業まで幅広い分野に手を広げている。その背景には、M&Aの活用を通じて事業の入れ替えを行ってきたことがある。一時の倒産危機も克服し、石油元売りという枠を超えて事業を展開する出光興産のM&Aを見ていく。

【企業概要】石油製品事業、石油化学製品事業、資源事業の3つの主要セグメント

 出光興産は、1911年に出光佐三氏が石油販売会社・出光商会として北九州の門司で創業した。当時、国内では石炭生産が全盛期だったが、石油の将来性に着目しての創業であった。その後、九州地方から日本を東進し、さらに中国(満州)への進出も果たす。ところが、第2次世界大戦の戦禍を被り、ほぼすべての事業を失った。戦後はGHQの統治下で石油販売業を再開し、現在でも石油製品事業は同社の中核を担っている。

 この石油製品事業に加えて、石油化学製品事業と資源事業をあわせた3つの主要セグメントで同社は構成され、2016年度のグループ全体売上高は3兆2000億円にものぼる。

【役員陣】現社長は創業家を離れて3代目

 出光興産は長らく創業家である出光家の同族企業であったが、2006年の上場以降、経営面においてオーナー色はなくなっている。現社長の月岡隆氏は慶應義塾大学を卒業後、出光興産に入社。執行役員需給部長、取締役、常務執行役員経営企画部長、副社長などを経て2013年に社長に就任。同社では2002年以降、創業家以外から社長が就任しており、月岡隆氏で創業家以外としては3代目となる。

【株主構成】経営統合に反対する創業家

 筆頭株主の日章興産株式会社は出光家の資産管理会社に当たり、出光文化福祉財団、出光美術館を含めると出光家が株式の30%近くを保有していることがわかる。上場を機に経営からは完全に撤退した創業家であるが、昭和シェル石油との合併の話が出た際には、公然と反対の意を表明し話題になった。

 創業家が30%近くを保有する一方で、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行が上位株主に名を連ねている。これは、2000年以降に経営悪化を受けた資本政策の一環で、第三者割当をした際のものである。

出光興産の筆頭株主

保有者名所有株式数(千株) 持ち株比率(%)
日章興産株式会社※27,120 16.95
公益財団法人出光文化福祉財団※12,392 7.75
公益財団法人出光美術館※8,000 5.00
出光興産社員持株会 6,080 3.80
株式会社三菱東京UFJ銀行 5,142 3.21
株式会社三井住友銀行 5,142 3.21
三井住友信託銀行株式会社 5,142 3.21
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 4,175 2.61
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 3,287 2.05
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 3,067 1.92
79,552 49.72

※創業家一族が保有、2016年3月時点 有価証券報告書を元に作成

【M&A戦略】3つの時代に対応したM&Aで独自路線を堅持

下記は出光興産の行った主なM&Aの一覧表である。

年月 内容
1911年6月 出光佐三が門司で出光商会を創業
1972年6月 石油メジャーのガルフ(現シェブロン)傘下の沖縄石油精製に資本参加
1980年6月 ガルフから沖縄石油精製の株式45%を取得し、完全子会社化
1980年8月 神戸製鋼所、三菱化成工業、日商岩井、アジア石油と共同出資でオーストラリアに日本褐炭液化株式会社を設立
1985年5月 カナダのサスカチワン州100%出資の鉱山会社、フランス核燃料公社などと、ウラン鉱開発会社を設立
1986年9月 カナダの石油開発会社アルタガスとジョイントベンチャーを設立
1989年4月 オーストラリアのマッセルブルック・エナジー・マイニング社の石炭部門であるマッセルブルック鉱山を買収
1989年9月 オーストラリアの南東部で石炭を生産しているマッセルブルック・コールの全株式を取得し、完全子会社化
1992年6月 米石油販売会社USAペトロリアムからカリブ海の米自治領プエルトリコのガソリンスタンド131ヶ所を運営するGPR社など四社の全株式を取得し、完全子会社化
2000年6月 スペインでガソリン販売をおこなうIDETEXの株式65%を、35%を出資する合弁相手であるグランストンベリーに対して25億円で売却
2000年6月 住友、東海銀行、住友信託銀行の三行を引受先にそれぞれ80億円(出資比率3.49%ずつ)、東京海上火災保険を引受先に30億円(出資比率1.31%)、住友生命保険を引受先に20億円(出資比率0.87%)、合計290億円の第三者割当増資を実施
2000年7月 三菱信託銀行と中央三井信託銀行の二行を引受先に合計50億円の第三者割当増資を実施
2000年11月 千葉銀行、山口銀行、大分銀行の三行を引受先にそれぞれ2億円の第三者割当増資を実施
2001年2月 東京三菱銀行に30億円の第三者割当を実施
2005年4月 三井化学と、ポリオレフィン事業の統合を目的に、新設合弁会社プライムポリマーに70億円(出資割合35%)を出資
2005年4月 住友金属鉱山と、液晶など薄型テレビ向けパネルに使われる透明電極材料を製造する新設合弁会社ISエレクトロード・マテリアルズに1億2500万円(出資割合51%)を出資
2005年10月 金融機関や取引先を引受先に総額750億円の第三者割当増資を実施
2006年4月 液化石油ガス(LPG)事業の統合を目的に、子会社の出光ガスアンドライフと三菱商事の子会社である三菱液化瓦斯を合併
2006年10月 東証一部上場
2006年11月 カタールで石油精製事業をおこなうラファン・リファイナリーの株式10%を取得
2007年10月 ISエレクトロード・マテリアルズの株式49%を取得し、完全子会社化
2008年3月 サービスステーションの運営や工場・船舶向けに燃料を販売する住商石油(売上高1,206億円)の全株式を住友商事から取得し、完全子会社化
2011年6月 農薬メーカーのエス・ディー・エス バイオテック(売上高114億円)の株式69.6%を52億円で取得し、子会社化
2012年4月 イエローハット(売上高951億円)の株式5%を17億円で取得し、資本提携
2012年12月 オーストラリアの燃料油販売会社フリーダムエナジーホールディングス(売上高700億円)の株式100%を取得し、完全子会社化
2014年3月 アルタガスとのジョイントベンチャーを通じて、カナダでLPG・原油等のマーケティング、物流事業等を展開するペトロガス(売上高2,588億円)の株式66.7%を800億円で取得し、子会社化
2016年11月 インドネシアの石炭生産会社バラムルチグループの1社であるミトラバラ・アディプルダナ社(売上高112億円、株式保有割合12%)の株式18%を追加取得し、持ち分法適用会社化
2016年12月 ロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル石油の株式31.3%を1,589億円で取得

作成:M&A Online編集部

 同社のM&Aの歴史を振り返ってみると、古くは30年以上前からM&Aを活用して事業規模を拡大してきたことがわかる。M&A案件の内容から、これまでの40年間を大きく3つの時期に分けることができる。

 1つ目の時期(第1段階)が、石油をはじめとした資源開発関連のM&Aを行っていた1980年から1992年までの約10年間である。オイルショックの影響が明けて安定成長期に入ってからバブルの崩壊まで、国内の安定した需要を背景に、海外へ打って出ている時期と言える。

 2つ目の時期(第2段階)は、自社の資本増強と、グループ会社の整理を行った2006年までを指す。この時期の終盤には上場を果たすことにもなる。そして3つ目の時期(第3段階)は、上場後、多角化と本業の強化を行うM&Aを実施してきた時期であり、それが現在も継続していると考えられる。

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