2010年にハウステンボスを子会社化するなど、ホテル事業やテーマパーク事業を拡大させる旅行業界大手のエイチ・アイ・エス<9603>。2016年10月には「M&A本部」設置を発表し、M&Aを拡大戦略に積極的に活用する方針を打ち出している。

【企業概要】旅行事業を中核に、各事業セグメントで斬新なアイデアを展開

エイチ・アイ・エスは1970年12月に創業社長である澤田秀雄氏が設立した。2004年10月に東証一部に株式を上場。「ツーリズムを通じて、世界の人々の見識を高め、国籍、人種、文化、宗教などを越え、世界平和・相互理解の促進に貢献する。」という企業理念のもと、事業領域として旅行事業、テーマパーク、ホテル、運輸事業に取り組んでいるほか、九州産交グループを傘下に持つ。

同社の中核である旅行事業は既存の旅行会社に加え、エアラインによる直販、インターネットを活用したexpedia(エクスペディア)などのオンライントラベルエージェントの台頭、さらに宿泊施設・民宿を貸し出すAirbnb(エアビーアンドビー)等の新勢力が登場し、競争環境は一層激化することが見込まれている。その中でエイチ・アイ・エスは旅行関連事業へ経営資源を集中し、グローバル市場での優位性の確立を目指している。

セグメント別に見ると、主力の旅行事業では日本発海外旅行事業・日本国内旅行事業・訪日旅行事業などを展開。国内295拠点、海外66ヵ国141都市230拠点に張り巡らせたネットワーク網でサービスを提供する。エチオピアのアディスアベバやウズベキスタンのサマルカンドに日本の旅行会社として初めて出店してツアーデスクを開設するなど、営業拠点のグローバルな拡充に努めている。

ホテル事業では、ウォーターマークホテルグループ(ゴールドコースト、ブリスベン、札幌、長崎、バリ)とグアムリーフ&オリーブスパリゾート(グアム)の計6つのホテルを運営。ホテル事業が新たな収益の柱となるよう取り組んでいる。

テーマパーク事業では、長崎県のハウステンボスと愛知県のラグーナテンボスを運営。数々のイベントを開催し、ロボットが接客することで話題となった「変なホテル」を開業するなど、来場者の体験価値の向上に力を入れている。

運輸事業では、国際チャーター専門の航空会社であるアジア・アトランティック・エアラインズを運営している。なお、子会社化した九州産交グループでは、路線バス事業や貸切バス事業のほか、飲食・売店事業を展開している。

【経営陣と大株主】経営の第一線から退いた創業者が社長に復帰

会長兼社長である澤田秀雄氏は1970年にエイチ・アイ・エスを創業し、代表取締役社長に就任。その後2004年にいったん会長となり経営の第一線から身を退くも、2016年には12年ぶりに社長に復帰。グループの成長を陣頭指揮している。66歳。

いったん経営の第一線から身を退くも再び社長に復帰するケースは、澤田秀雄氏のほかユニクロの柳井正氏など数多くある。そこに共通する課題は経営の再建・再構築・立て直しである。裏を返せば、経営の陣頭指揮がとれるほどの後継者が育っていなかったということでもある。

【大株主】株式の3割弱を創業者が保有

創業者である澤田秀雄氏が現在も筆頭株主であり、持ち株比率は27.93%。古参の取締役である行方一正氏(1985年入社)も、第10位株主に名を連ねている。その他は金融機関中心に分散している。

氏名または名称所有株式数(株)持株比率(%)
澤田秀雄 19,136 27.93
日本トラスティ・サービス信託銀行 8,626 12.59
自己株 6,621 9.66
(有)秀インター 3,403 4.97
日本マスタートラスト信託銀行 3,040 4.44
資産管理サービス信託銀行 1,501 2.19
全国共済農業協同組合連合会 1,334 1.95
JPモルガンチェースバンク(ロンドン) 1,226 1.79
JPモルガンバンク ルクセンブルグSA 1,079 1.58
行方一正 1,021 1.49
46,993 68.58

2016年10月末時点、有価証券報告書に基づきM&A Online編集部作成