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明らかになってきた旅行会社の実態「HIS」は300億円を超える赤字に
新型コロナウイルスの影響で苦境に陥っている旅行会社の実態が次第に明らかになってきた。エイチ・アイ・エスは2020年10月期の営業損益が367億円の赤字に陥る見通しを公表した。
旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>は2020年10月2日に埼玉県川越市で、そば屋「満天ノ 秀そば」を開店する。新規事業として飲食業に進出するもので、今回の出店が飲食店第1号となる。
旅行事業に次ぐ将来の新しい事業の柱を育てるのが狙いで、新規事業としては飲食業のほかにも、農業やホテル・旅館再生などのプロジェクトに取り組んでいる。
そば屋の2号店は手軽に、そばの味と風味を楽しめることをコンセプトに、11月にも東京都心に開店する予定。
HISでは「おいしいそばを提供しているにもかかわらず、継続が困難になった店舗の味や伝統を継承し、後世に残していく」としており、今後そば屋のM&Aが進みそうだ。
今回開店する「満天ノ 秀そば」は神奈川県伊勢原市で31年間続くそば屋で、国産のそば粉を使用した十割そばを、打ちたて、茹でたての状態で提供している。
そば屋は個人経営店が多く、後継者が見つからず閉店せざるを得ない状況にある店が少なくないという。さらに今年は新型コロナウイルスの影響で客足が鈍り、倒産する店舗が増加するなど厳しい環境下にある。
HISは、そばが歴史のある日本食であるにもかかわらず、寿司やラーメンなどと比べて海外での認知度が低く、将来、海外に日本文化を広げるうえで、そばのポテンシャルは高いと判断し、後継者不足などに悩むそば屋の事業を引き継ぐことにした。
今後、地域や顧客のニーズにあったコンセプトで店舗を展開し、日本の食文化の継承を加速する。
HISは飲食業への参入と並行して、クリップクリエイティブ(兵庫県明石市)と日本酒の海外販路開拓に関する業務提携に向け基本合意した。
日本の伝統文化の一つである日本酒に関わる生産者や自治体、一次産業事業者を支え、地域創生につなげるのが狙いだ。
近年、日本酒の輸出が増えているものの、海外では日本酒が正しく管理されず、日本酒の魅力が伝わっていないケースがあるという。
クリップクリエイティブは日本酒の酸化を抑え、長時間搾りたての風味やフレッシュ感をそのまま維持できるオランダ製の特殊容器を保有しており、HIS の海外ネットワークを活用することで、海外でも作りたての味を提供できるようにする。
10月から英国、ドイツ、シンガポールで、現地ホテルやレストランに営業を開始する予定で、最終的にはHIS のすべての海外拠点から、日本酒を届けるようにする。
HISは新型コロナ感染症の拡大に伴う旅行需要の激減で業績が悪化しており、2020年10月期の営業損益は367億円の赤字に陥る見通し。
飲食業などの新規事業の開拓や、海外拠点の活用は待ったなしの状況といえそうだ。
文:M&A Online編集部
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新型コロナウイルスの影響で苦境に陥っている旅行会社の実態が次第に明らかになってきた。エイチ・アイ・エスは2020年10月期の営業損益が367億円の赤字に陥る見通しを公表した。