【M&A戦略】事業戦略上、ターゲットを絞ってM&Aを実施

エイチ・アイ・エスの沿革と同社が行ってきた主なM&Aを見ていこう。件数こそ多くはないが、事業戦略上、重要な意味を持つものが多い。

エイチ・アイ・エスの初めてのM&AらしいM&Aは、2000年5月の豊和トラベルサービス(現オリオンツアー)の子会社化だ。格安国内旅行・スポーツ系ツアーに強みを持つ同社をグループに加え、さらに2002年11月にはクルーズ旅行専門のクルーズプラネットを買収。ちなみに、クルーズプラネットの会長である澤田まゆみ氏はエイチ・アイ・エスの創業者・澤田秀雄氏の妻である。エイチ・アイ・エスとしては、上場を前に自社の提供するサービスの幅を広げていたと考えることができる。

 2004年10月の東証一部上場後は、2009年1月にヨーロッパを中心にアメリカ・カナダ・韓国など各国の鉄道チケットがオンライン予約できるサイト「MAXVISTA TRAVEL」を運営する欧州エクスプレスを買収している。これにより、日本最大の29ヵ国60種類の鉄道パスがオンラインで予約可能となった。

そして、エイチ・アイ・エスのM&Aを語る上でなんといっても外せないのが、2010年4月のハウステンボスの子会社化である。1992年の開業以来18年間ずっと赤字続きだったハウステンボスを子会社化後、半年で黒字化させてスピード再生を果たし、世間を驚かせた。黒字体質が定着し、現在は年間300万人規模で入場者を集め、全国のレジャー施設の中でも屈指の集客力を誇っている。

ハウステンボス再生の実績によって再生ノウハウを得た同社は、愛知県蒲郡市の複合レジャー施設「ラグーナ蒲郡」の再建にも着手。第3セクター「蒲郡海洋開発」からテーマパークなど3事業を買収した。2014年5月に設立したラグーナテンボスが事業を引き継ぎ、立て直しを図っている。

その他、2012年7月には九州産業交通グループを傘下に収め、中長期的な戦略である「国内旅行の強化」や「訪日旅行の促進」に沿った事業展開を進めている。

M&A戦略において特出すべきは、2016年10月に「M&A本部」の設置を発表したことだ。グループの持続的な発展を図るために、旅行業、ホテル事業と、旅行業に関連するIT分野について500億円規模を目標にM&Aを企画・検討・実施する役割を主導し、積極的にM&Aを活用する狙いだ。設置には、これまで手掛けたM&Aは同社が積極的に動いたものではなく、社外からの引き合いによるものであったことの反省も見てとることができる。

「M&A本部」設置後は、カナダに拠点を置く旅行会社のメリットホールディングスを2016年12月に買収。メリットホールディングスは法人会員向けの旅行事業や出張などのビジネス向け旅行事業などを展開している。同社の買収により、旅行市場が活発な北米事業のシェア拡大を目指す。

さらに2017年3月には台湾ホテル大手のグリーンワールドホテルズ(GWH)を買収したことも触れておきたい。「変なホテル」を含むホテル運営によって培ったマーケティングや運営のノウハウを活用し、収益拡大を図る。また、GWHを橋頭保に、世界有数の市場規模を誇る中国語圏への進出を積極的に展開する予定だ。