国内酒類の売上でキリンがアサヒ国内2位の座を奪えるか

alt

サントリーに次いで国内の酒類売上2位のアサヒグループホールディングス<2502>に、キリンホールディングス<2503>が肉薄しています。アサヒの2021年12月期第3四半期の国内酒類の売上高に当たる売上収益は5,034億円、キリンは4,850億円でした。その差は184億円。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年12月期第3四半期の国内酒類の売上収益はアサヒが6,570億円、キリンが5,107億円で1,500億円近い差が生じていました。飲食店への卸比率が高く、ビールへの依存度が高いアサヒが大打撃を受けました。居酒屋の売上高が依然として戻っておらず、アサヒの苦戦は続くものと予想されます。

この記事では以下の情報が得られます。

・アサヒ、キリン、サッポロの国内酒類売上収益推移
・1世帯アルコール、外食支出額

ジョッキ缶、マルエフのヒットも限定的か

国内の酒類において、アサヒはビールへの依存度が高く、全体の56%を占めています。発泡酒が6%、第3のビールを含む新ジャンルが14%です(2019年アサヒグループホールディングスFACTBOOKより)。一方、キリンはビールが41%、発泡酒が14%、新ジャンルが45%という構成比率になっています(販売概況より)。

ビールは増税の影響などを受けながら、出荷数は1994年を境に緩やかに下降していました。その穴を発泡酒が埋めていましたが、現在は第3のビールやレモンサワーなどの缶酎ハイがメインになっています。

酒のしおり
国税庁課税部酒税課「酒のしおり」

アサヒは種類を広げる戦略はとらず、ビールのシェア獲得を進める戦略をとりました。その手法の一つが飲食店への販売でした。業務用としての販売はアサヒが24%を占めていますが、キリンは14%に留まっています。

キリンはビール、発泡酒、第3のビール、酎ハイなど商品やジャンルの幅を広げました。販売チャネルも分散していました。その差が新型コロナウイルス感染拡大によって鮮明になりました。

■国内酒類売上収益推移(単位:億円)

2019年12月期
第3四半期
2020月12期
第3四半期
2021年12月期
第3四半期
アサヒ 6,570 5,553 5,034
前期比 97.9% 84.5% 90.7%
キリン 5,107 4,792 4,850
前期比 101.1% 93.8% 101.2%
サッポロ 2,201 2,067 2,020
前期比 99.9% 93.9% 97.7%

※決算短信より筆者作成

アサヒは2020年12月期第3四半期の国内酒類売上収益は前期比15.5%減の5,553億円。2021年12月期第3四半期はそこから更に9.3%減少し、5,034億円となりました。キリンは2020年12月期第3四半期が前期比6.2%減の4,792億円となりましたが、2021年12月期第3四半期は1.2%増の4,850億円に回復しています。

コロナ前の2019年12月期第3四半期と2021年12月期第3四半期で比較すると、アサヒは23.4%減、キリンは5.0%減とその差ははっきりしてきます。

2021年に入り、アサヒは家庭用商品でヒットを連発します。4月にコンビニ限定で販売した「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は3日で98万ケースを超え、生産が追いつかずに出荷を一時停止しました。緊急事態宣言の発令で居酒屋の利用が控えられ、家庭でもジョッキ感覚で飲める缶ビールに人気が集中しました。アサヒの企画力が光るヒット商品です。

9月には「アサヒ生ビール(通称マルエフ)を28年ぶりに復刻販売。まろやかな味わいやレトロな缶のデザインが好評を得て、想定外の売れ行きを見せました。こちらも一時販売を休止。11月に再発売しています。マルエフは缶ビールとしての販売は中止していたものの、一部飲食店では継続して販売していました。アサヒは酒類の幅を広げることなく、ビールを軸にヒット商品を2つも生んだことになります。極めてアサヒらしい商品と言えますが、コロナで生じた穴を埋めるまでには至っていません。

NEXT STORY

【2019年第4四半期・年間】日本企業M&A公表案件ランキング

【2019年第4四半期・年間】日本企業M&A公表案件ランキング

2020/01/17

2019年の日本関連M&A公表案件は、23.9兆円と、過去最高の前年から36.9%の減少となった。全体の案件数は3,728件と、前年比5%減少したものの、前年に次ぎ過去2番目の最多となった。

関連のM&A速報