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「定食屋」や「バーガー店」に変わる居酒屋たち
居酒屋業界で新業態の開発が相次いでいる。「庄や」などを展開する大庄は2021年7月15日に、定食業態「巣ごもり食堂」などの新業態への転換を進めると発表した。
新型コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言に翻弄される居酒屋企業が、ウィズコロナを見据えて変化しています。鳥貴族ホールディングス<3193>は、チキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」の1号店を8月25日大井町に出店。寿司居酒屋「や台ずし」のヨシックスホールディングス<3221>はM&Aを通して有料老人ホーム事業に進出すると発表しました。「とらふぐ亭」の東京一番フーズ<3067>は「寿し常」を譲受して、回転寿司事業へと進出しています。この記事は居酒屋企業の新たな取り組みを紹介するものです。以下の情報が得られます。
・コロナで居酒屋企業はどう変わったか
・新事業の詳細
新型コロナウイルス感染拡大前の居酒屋ビジネスは、比較的単純な構造をしていました。目立つ場所に出店をしてグルメメディアに広告を出し、集客するというものです。お通し、アルコールを提供しているために客単価が高く、家賃が高額でも十分負担ができました。その参入障壁の低さから数多くの店舗が生まれ、いかにして差別化を図るかといったところに難しさがありました。コロナはこのビジネス構造そのものを壊してしまいます。
鳥貴族は2020年8月から2021年6月までの全店の売上高が前年比58.1%に留まりました。2021年7月期第3四半期は14億6,300万円の純損失を計上しています。「塚田農場」を運営するエー・ピーホールディングス<3175>は2022年3月期第1四半期の3億4,100万円の純損失を計上し、自己資本比率はコロナ前の2020年3月末の14.5%から1.0%まで激しく落ち込んでいます。
危機的状況に見舞われ、居酒屋企業がとったスタンスは大きく2つです。1つは既存の居酒屋を食堂などに転換し、需要が回復するのを待つタイプです。もう1つは全く別の事業を立ち上げるタイプです。
前者は転換に費用をかけず、増資などで資金を調達しながら急場を凌いでいます。エー・ピーホールディングス、チムニー<3178>がこちらに該当します。後者は自社で新たに事業を立ち上げたり、M&Aを活用して手っ取り早く新たな事業を創出しています。鳥貴族、ヨシックス、ワタミ、東京一番フーズがこちらに該当します。
大胆な一手を繰り出したのが「や台ずし」のヨシックスです。ヨシックスは2021年8月17日に新会社ヨシックスキャピタルを立ち上げました。事業内容はベンチャー企業への投資とM&Aの仲介です。ヨシックスはこの会社を通して有料老人ホームへの進出を計画しています。
老人ホームや介護事業で一時成功したのがワタミ<7522>です。ワタミは2005年に高齢者住宅の1号棟をオープンしました。そこから介護事業を本格化させます。ワタミはこの介護事業を2015年にSOMPOホールディングス<8630>に売却することになりますが、この事業は好調でした。
2013年3月期の国内外食事業の売上高は740億7,500万円、セグメント利益は30億8,900万円でした。利益率は4.2%です。一方、介護事業の売上高は388億4,600万円、セグメント利益は36億3,100万円。利益率は9.3%です。利益率は外食事業の2倍以上でした。この数字はワタミの外食事業の業績が大幅に悪化する前のもの。介護事業は極めて経営効率の良いものでした。
ヨシックスはもともと生産性の高い会社です。コロナ前の2020年3月期の売上高が187億900万円で営業利益は20億3,600万円。営業利益率は10.9%です。高利益体質だったため、自己資本比率が高くなっていました。2021年3月末時点で自己資本比率は56.7%です。ヨシックスは大規模な増資は行っていません。資金的な余裕が残されていたことが、今回の一手に繋がっています。
居酒屋業界で新業態の開発が相次いでいる。「庄や」などを展開する大庄は2021年7月15日に、定食業態「巣ごもり食堂」などの新業態への転換を進めると発表した。