ヤフーの株価は2015年8月に一時570円を付けたが、その後、400~500円前後でのボックス圏の動きとなっている。
この間、株価を押し下げる材料が2つあった。1つは2015年12月のアスクル買収の発表だ。約1000億円の買収費用を本当に回収できるのか不安が先行した。
もう1つが2016年7月、米ベライゾンによる米ヤフーの買収計画が明らかになり、米ヤフーによる日本のヤフー株の保有状況に対する不透明感が浮上したこと。同じ時期にソフトバンクグループが英アーム社を3.3兆円で買収すると発表したことから、ソフトバンクによるヤフー株の追加取得の期待も後退。株価は2016年11月に一時400円を割り込む水準まで売られた。
同年11月、米大統領選の結果を受けて株式相場が上昇に転じたことを追い風にヤフー株も持ち直しの動きが出ている。ただ米ヤフーの情報流出問題を受け、ベライゾンが買収計画の見直しを検討していると報じられており、今後も不安定な値動きとなる可能性がある。
ヤフーは、過去、数多くのM&Aを実施しているが、それぞれ、シナジー効果を実現する姿勢は、お手本のような企業といえる。また、近年まで自社と比較して比較的小規模のM&Aが多かったため、M&Aにより財務バランスが悪化するという事もなかった。ただ、2016年3月期においては、一休やアスクルといった企業を買収し、のれん等が多額に計上されている。これらの企業で期待されたシナジー効果が発揮できなかった場合、のれんの減損処理等により、ヤフーの業績に与える影響は大きい。
また、今後、ヤフー自体の株主構成もポイントになる。ベライゾンの米ヤフー買収が実現したとして、直ちに、ヤフーの業績に与える影響はないという事であるが、ソフトバンクグループの動向含めて注視したい。
この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。
まとめ:M&A Online編集部
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