経営統合の前に「ルノーの独立」を

これが両社の経営統合にブレーキをかけているとして、仏政府はルノーとFCAの経営統合交渉で強硬姿勢に出た。要は日産との経営統合のように「泥沼化」しないためには、交渉の最初が肝心というわけだ。

仏政府はFCAに対して自国内の雇用と工場が残されるという条件に加えて、新会社の取締役会への政府代表者の参加や最高経営責任者(CEO)指名の実質的な拒否権などを求めた。RAMAのような「防波堤」を作らせないために、仏政府の言い分を初めから全て飲ませようとしたのである。

FCAは、かつてルノーが救済した当時の日産のような経営破綻会社ではない。当然ながら「なぜそこまで譲歩してルノーと経営統合しなくてはいけないのか」と反発する。その結果が「スピード撤回」だった。トヨタ自動車<7203>や独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の1.5倍という超巨大自動車メーカーの大株主の座も、経営統合により得られる年間約50億ユーロ(6883億円)ものコスト削減効果も、一瞬にして泡と消えた。

仏政府の経営干渉はルノーに悪影響しか与えていない(同社ホームページより)

手痛い失敗に、仏政府も一転して弱気になったようだ。6月8日にはルメール経済・財務相が「日産とルノーのより強固なアライアンスにつながるのならば、政府のルノー株保有比率を引き下げることが可能だ」と、「戦犯」扱いした日産にすり寄った。FCAとの経営統合が幻になり、「このうえ日産にまで離反されたら大変」と憂慮したのであろう。

仏政府が、こうした「あつものに懲りてなますを吹く」ちぐはぐな対応を繰り返しているようでは、経営統合どころかルノーの経営にも悪影響を与えかねない。仏政府はルノーの経営から完全に手を引き、経営陣の自主的な判断を尊重すべきだろう。仏政府が「もの言う株主」では、ルノーが合理的な経営判断を下し、行動するのは極めて難しい。

文:M&A online編集部