日本ペイントホールディングス(HD)が17日、豪州の塗料メーカー最大手、デュラックスグループの全株式を取得し、子会社化すると発表した。買収金額は3005億円(37億5600万豪ドル)に上り、日本企業によるM&A案件として今年最大となる。今年に入ってここまで買収金額トップだった第一生命保険ホールディングスの1300億円(1月発表)を大きく上回った。

“公約”を有言実行

日本ペイントHDは欧州や米国、中国の有力塗料メーカーを相次ぎ買収し、M&Aをテコにグローバル化を進めてきた。2017年には約700億円で米ダン・エドワーズを傘下に収めた。今回の買収金額は連結売上高(2018年12月期は6276億円)の5割近くに上る桁違いの規模で、文字通り、社運をかけた大型M&Aといえる。

同社で思い出されるのは2017年末、米塗料大手アクサルタ・コーティング・システムズに対して1兆円規模での買収提案をしながら、交渉中止に追い込まれ、ご破算になった一件。身の丈知らずとの批判も浴びた。その際「今後も積極的にM&A・戦略提携を進める」と“公約”していたが、有言実行した形だ。

2018年に入って以降、4月16日時点のM&A件数は260件(経営権が移転する案件、グループ内再編は除く。「適時開示」ベース)。1000億円を超える案件は第一生命HD、ブリヂストン、日本電産の3件だが、いずれも1000億円台で、今回、日本ペイントHDが一気にトップに躍り出た。

日本電産に続き、「1000億円超」2日連続

日本電産はその前日(16日)、オムロンから車載用電装部品子会社のオムロンオートモーティブエレクトロニクス(愛知県小牧市)を約1000億円で買収することを発表したばかりで、1000億円超の大型M&Aが2日連続した。

◎2019年:買収金額1000億円超の案件(公表時点)

1日本ペイントHD、豪塗料メーカー最大手のデュラックスグループを買収(3005億円)
2第一生命HD、米生保グレートウェストの既契約を買収(約1300億円)
3ブリヂストン、オランダの車両管理サービス会社トムトムテレマティクスを買収(1138億円)
4日本電産、オムロン子会社で車載電装部品のオムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収(約1000億円)

豪企業では歴代3番目の買収規模

3000億円を上回るM&Aは2018年を振り返っても、総件数781件中6件にとどまる。その筆頭は武田薬品工業が6兆円以上を投じてアイルランドの製薬大手シャイアーを買収した案件だ。

また、豪州企業を対象するM&Aとしては、2015年に日本郵政が物流大手トール・ホールディングスを約6200億円で買収したのが過去最高。日本ペイントHDの案件は、三菱UFJ信託銀行による豪金融大手コモンウェルス銀行傘下の資産運用部門の買収(約3280億円、2018年10月発表)に次ぐ歴代3番目の規模とみられる。

日本ペイントHDが買収するデュラックスは豪州とニュージーランドの塗料市場でシェア首位で、豪証券取引所に上場する。主力の塗料事業のほか、DIY(日曜大工)用品事業を手がける。直近業績は売上高約1480億円、営業利益約180億円。買収完了は8月中旬を見込む。

世界の塗料業界は米シャーウィン・ウィリアムズ、オランダのアクゾ・ノーベル、米PPGが3強を形成し、日本ペイントHDはこれに次ぐ第2グループに位置する。

同社は中国を中心とするアジアに軸足を置き、グローバル展開を加速している。中国・アジアが売上高全体の約6割を占めるが、豪などオセアニア市場についてはこれまでほぼ未開拓だった。

新経営体制が3月末にスタート

日本ペイントHDは3月末、新会長に前産業革新投資機構(JIC)社長の田中正明氏を迎えた。筆頭株主であるシンガポール塗料大手ウットラムグループを率いるゴー・ハップジン氏からバトンを受け、新経営体制がスタートした。

約3000億円に上る買収資金は金融機関からの借り入れで賄う予定。事業のシナジー(相乗効果)をどう引き出し、長期にわたって巨額投資に見合うリターンを確保していくのかが新経営体制に問われる。

文:M&A online編集部