【4月M&Aサマリー】13件減の70件、3カ月連続で前年を下回る|米KKRが日立物流にTOB

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日立物流の事業所(埼玉県内で)

ティラド、熱交換器のロシア合弁子会社を譲渡

海外案件ではロシア関連で動きが表面化した。ティラド(旧東洋ラジエーター)が自動車・建機用などの熱交換器を製造するロシア子会社TRM(ニジニノヴゴロド市)を傘下に置くオランダ持ち株会社を、ロシアの合弁相手に譲渡することを決定。2009年以来のロシア事業から撤退することになった。

3月にゼロだった日本企業による米国企業の買収は2件あった。日本管財がホノルルでオフィスビルなどの資産管理業務を手がける米パシフィック・プロパティー・グループ(ハワイ州)を、ティーガイアがWi-Fi関連サービスの米Relay2(カリフォルニア州)の子会社化を発表した。

アフリカでの案件もあった。サントリー食品インターナショナルは、ナイジェリアの清涼飲料水子会社をモーリシャス企業に売却する。サントリー食品は2016年に英国製薬大手グラクソ・スミスクラインからナイジェリアでの飲料事業を取得していた。

TOB中の東洋建設、買収合戦の様相も

海洋土木大手の東洋建設をめぐるTOBは行方が混とんとしてきた。東洋建設の子会社化を目的に、前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスが3月末からTOBを実施しているが、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(YFO、東京都港区)が待ったをかけたのだ。

YFOは現在、東洋建設に対して買収提案を打診中。この中で、インフロニアの770円を230円上回る1株1000円の買付価格を提示している。YFOは傘下の投資会社3社を通じて東洋建設株を買い進め、保有比率は26%余りに達し、インフロニアに代わって筆頭株主に躍り出ており、買収合戦に発展しかねい情勢だ。

インフロニアは5月9日までとしていた買付期間を5月19日まで延長することを決めたが、買付価格は変更していない。ただ、東洋建設の株価はインフロニアの買付価格を上回る900円台の高値圏で推移し、TOB成立が絶望的。買付価格引き上げに動くのか、インフロニアの出方が注目される。

◎4月M&A:金額上位案件(10億円以上)

1 日立物流 米KKRが日立物流をTOBで非公開化。日立製作所は10%を再出資 4492億円
2 リコー 富士通傘下でスキャナー大手のPFU(石川県かほく市)を子会社化 842億円
3 住友倉庫 米国海運子会社のウエストウッドをシンガポール海運大手スワイヤーに譲渡 約185億円
4 トライステージ MBOで株式を非公開化 109億円
5 シップヘルスケアホールディングス 医療・介護施設向けカーテンリース・販売のキングラン(東京都千代田区)を子会社化 90.3億円
6 アルコニックス リチウムイオン電池向け機構部品製造のソーデナガノ(長野県岡谷市)を子会社化 88.3億円
7 チヨダウーテ ドイツ建材大手のクナウフ・グループがチヨダウーテをTOBで子会社化 77億円
8 アウトソーシング 倉庫内作業向け人材派遣・業務請負のサンキョウ・ロジ・アソシエート(東京都渋谷区)を子会社化 62.3億円
9 アマナ ストックコンテンツ企画・販売子会社のアマナイメージズ(東京都品川区)を投資会社に譲渡 20.1億円
10 三井松島ホールディングス 送電線用架線金物製造の日本カタンホールディングス(大阪府枚方市)を子会社化 19.2億円
11 サントリー食品インターナショナル ナイジェリアの清涼飲料水子会社をモーリシャス企業に譲渡 15億円
12 日本情報クリエイト 不動産業界向け情報サービス支援のリアルネットプロ(東京都港区)を子会社化 14.3億円
13 ティーガイア Wi-Fi関連サービスの米Relay2(カリフォルニア州)に追加出資し、子会社化 10.9億円

文:M&A Online編集部

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